俳優・綾野剛が、映画『日本で一番悪い奴ら』(公開中)で第15回ニューヨーク・アジア映画祭の「ライジング・スター賞」を受賞し、現地時間28日、同地で行われた授賞式にメガホンを取った白石和彌監督と共に出席した。

「ライジング・スター賞」を受賞した綾野剛

同賞は、「これからの世界的な活躍を期待する俳優」に贈られるもの。過去には、『モテキ』(11年)の長澤まさみや、『さよなら歌舞伎町』(15年)と『TOKYO TRIBE』(14年)の染谷将太らが受賞してきた。会場となったリンカーンセンターは幅広い世代の男女で満席となり、映画祭のディレクターであるサミュエル・ジャミエール氏が綾野と白石監督を呼び込んだ。

今回がニューヨーク初上陸となる綾野は「会場の皆さま、本日はご来場いただきありがとうございます。ニューヨーク、最高です!」と英語であいさつ。歓声と祝福の拍手を浴びると「非常に光栄な賞を頂き、大変うれしく思っております」と感慨を示しつつ「私個人が、この賞を受賞したとは考えておりません。この『日本で一番悪い奴ら』という作品が評価され、私が代表として、今日この賞を頂いたのだと思っております」と映画チームに感謝を述べた。

同映画祭のオープニング作品となった本作。白石監督は「ビッグスター!」と満席の会場に綾野を紹介し、「映画の中でたくさん悪いことをしていますが、そのおかげで、この作品と、ライジング・スター賞を受賞した綾野剛がこの場にいます」と口にし、会場を沸かせた。

授賞式に続き、公式上映も敢行。実際に起きた"日本警察史上、最大の不祥事"とも呼ばれる「稲葉事件」をもとに、警部と"S"(スパイ)と呼ばれるチンピラなどの捜査協力者たちを映した本作だが、エンターテイメント性の高さと、桁外れのキャラクター展開によって上映中は絶えず笑いが起こり、後半では悪に染まった諸星(綾野)と同調するように観客は物語に引き込まれていた。終了するや、場内からは拍手が起こり、観客と共に鑑賞していた綾野と白石監督が紹介されると、2人へ賛辞も寄せられた。

綾野はティーチインに登場すると、「笑いながら楽しんで見ていただいたことに、とても感銘をうけています」と感激。「ある出来事をきっかけに、物語は重厚感を増していきますが、会場のリアクションもそれに応じて呼吸しているようで、そこは日本の劇場と似ていると感じました」と印象を語る。一方、白石監督は「聞くところによると、ニューヨークでも警察の不祥事などがあるようですし、ギャングもいる。そのような環境で、どう見てもらえるのか不安だったが、楽しんでもらえて安心しました」と安堵(あんど)の表情を浮かべた。

「大変栄誉ある賞をいただきまして、感謝しかありません。今回、ニューヨークにきて、たくさんのパワーをいただきました」と喜びを語った綾野。「エンターテイメントのありとあらゆる可能性に満ちあふれていて、この地で体感したことを自らの糧にして、今後の作品にも生かしていきたいと考えています」と締めると、会場から盛大な拍手が送られた。

ニューヨーク・アジア映画祭に登場した綾野(左)と白石和彌監督

(C)2016「日本で一番悪い奴ら」製作委員会