毎年この時期に送られてくる国民健康保険の納入通知書。通知書を開いてその金額の高さに驚き「こんなに保険料を払っているのは、自分だけなのでは?」と不安になる方もいるかもしれません。今回は自治体によって違う国民健康保険料のナゾに迫ってみました。
健康保険料が自治体によって違うワケ
そもそもなぜ自治体によって保険料が異なるのかというと、国民健康保険はそれぞれの市区町村が運営しており、市区町村ごとに保険料の計算方法が違うからです。具体的には、所得に応じて金額を計算する「所得割」、持っている土地や家の価値によって計算する「資産割」、世帯人数に応じて計算する「均等割」、1世帯あたりで計算する「平等割」があります。保険料は「医療分」「支援分」「介護分」の3つから構成されているのですが、その3つに対して、地域によってこれら4つの計算方法を組み合わせて保険料を算出しているのです。
そのため、保険料が高い地域と安い地域が出てきてしまうのですが、高額になる場合にはいくつかの理由が考えられます。国民健康保険は医療費の支出をまかなうものなので、例えば、自分が住んでいる地域で病院をよく利用する高齢者の割合が高ければ、必然的に保険料率を上げなければなりません。また、もともと税収が少なく財政に余裕がない地域は、保険料率を高くして医療制度を維持していく必要があります。
4人家族をモデルケースに東京都23区を比較してみよう
それでは、保険料が高い地域と低い地域を比較してみましょう 。ここでは、モデルケースを夫40代(年収550万円・固定資産税10万円/年)・妻30代・子供2人として、東京23区の例を見ていきます。
23区を国民健康保険料が高い順に並べると、1位は葛飾区で年間49万9,260円、2位は荒川区で年間49万8,554円となります。上位には、23区東部~北部のエリアがランクインしています。
最も安いのは千代田区の年間47万667円で、葛飾区と比較すると年間で3万円弱、1カ月あたりでは2,000円ほどの差があることが分かります。ただし、千代田区や中央区、港区などはそもそも人口が少ないため、保険料が安くなっているのでしょう。
この差を生んでいるのは、やはり23区ごとの計算方法の違いです。23区の保険料は所得割と均等割を用いて算出されていますが、介護分の所得割の料率を除いて全ての区で同じ料率が用いられています。介護分の所得割の料率が最も高いのは、葛飾区で1.76%、2番目に高いのが荒川区・板橋区で1.65%なので、介護分の納付金が高い区ほど保険料が高くなっているのです。これらの区に高齢者が多く住んでいるということが関係していると言えます。
今回は東京都23区だけを取り上げましたが、全国で見てもまた違ってくるようです。おおむね市区町村で比べると、区よりも市町村の方が保険料負担が低いと言われています。みなさんも自分が住んでいる自治体の国民健康保険料をきちんと確認して、他の自治体と比較してみてはいかがでしょうか。
株式会社回遊舎
"金融"を専門とする編集・制作プロダクション。お金に関する記事を企画・取材から執筆、制作まで一手に引き受ける。マネー誌以外にも、育児雑誌や女性誌健康関連記事などのライフスタイル分野も幅広く手掛ける。近著に「貯められない人のための手取り『10分の1』貯金術」「J-REIT金メダル投資術」(株式会社秀和システム 著者酒井富士子)、「NISA120%活用術」(日本経済出版社)、「めちゃくちゃ売れてるマネー誌ZAiが作った世界で一番わかりやすいニッポンの論点10」(株式会社ダイヤモンド社)、「子育てで破産しないためのお金の本」(株式会社廣済堂出版)など。