NTTドコモは24日、保有株の売却を巡りインドの財閥企業タタ・サンズと係争していた件で、ロンドン国際仲裁裁判所より仲裁裁定を受領、ドコモの主張が認められたと発表した。これにより、ドコモのインド事業は収束に向けて前進したことになる。それは同時にドコモにとって積極的な海外投資戦略の終わりを意味するかもしれない。
係争の経緯
ドコモがインド市場への参入を表明したのは2008年11月。インドのモバイル事業の将来性を評価し、タタ・サンズ傘下のモバイル通信事業者タタ・テレサービシズに出資すると発表した。同社の株式の約26%を取得、そのために約2640億円を要した。
巨額の出資となったが、注ぎ込んだのはそれだけにとどまらない。翌年3月には関連会社タタ・テレサービシズ マハラシュトラへの約110億円の出資も公表、さらには、2011年5月には、ネットワーク増強のためにタタ・サンズへ約146億円の追加出資も実行した。
しかし、これらの投資から得るものは少なかった。契約者数を大きく伸ばしたものの、出資前からタタ・テレサービシズが保有していた周波数免許が無効にされるなど、想定外の事態が重なり、タタ・テレサービシズの事業は立ち行かなくなる。2014年3月末において、ドコモには2,200億円以上の関連損失になった。タタ・テレサービシズ自身も960億円の債務超過となった。
ドコモは、インドの市場環境も考慮し、撤退を決意する。それが2014年4月のことだ。しかし、この撤退は出資当初から用意されていたプランでもある。万が一に備えて、タタ・サンズ、タタ・テレサービシズと株主間協定を締結し、退路を確保していたからだ。その内容は、2014年3月期において、所定の業績市場を下回った場合に、一定の条件で株式を売却できるというものだった。ドコモはその条件に従い、タタ・テレサービシズの全株式の買取りを同年7月にタタ側に求めた。
想定外だったのは、タタ側が協定を履行しなかったことかもしれない。そのため、ドコモは2015年1月にロンドン国際仲裁裁判所に駆け込み、仲裁の申し立てを行うことになった。ロンドン国際仲裁裁判所の裁定は、ドコモの主張を認め、タタ・サンズに損害賠償を命じるというものだった。タタ・テレサービシズの全株式と引き換えに、ドコモが要求する請求額の約1300億円を賠償するというのが具体的な内容となる。
ドコモは現段階で、損害賠償の履行についても不確定としており、収束に向かいつつあるも、いつ確定するかわからないとしている。これが今回のニュースというわけだ。
うまくいかないといえば、ドコモが過去に行った一連の海外通信事業者への投資も同じ。2002年3月期決算では、米AT&Tワイヤレス、オランダのKPNモバイルなど海外出資先の株式評価損により、8128億円(うちAT&Tが5056億円、KPNモバイルが2627億円)の減損処理を実施、それが響き、上場来初の赤字に陥った。いずれも、iモードの世界展開のために、巨額の海外投資を行ってきたが、実を結ばずに終わっている。