全国百貨店協会が発表した5月の外国人観光客の購買客数は、前年同月比12.7%増の23万人となった。その一方で、"爆買い"の象徴である免税品は、今年3月まで38カ月連続で前年超えを記録していたものの、ここにきて2カ月連続の前年割れ。総売上高は、134億8,000万円で前年同月比16.6%下回った。客は増えたにも関わらず、売り上げが下落。一体何か原因だろうか。
買い物単価の下落
品目別にみてみると、化粧品や食料品といった消耗品の売上が前年同月比44.7%増の41億4,000万円と大幅にアップしたにも関わらず、宝飾品や時計を含む一般物品の売上高が93億4,000万円で、前年同月比19.8%減となっており、購買単価が下落していることがわかる。
購買品目の変化はなぜ起きたのか。日本百貨店協会によると、外国人観光客の中でも、リピーターが増加したことから、旅行の関心が買い物から観光などにシフトしていっているあらわれとみている。また訪日客の客層がビザの緩和などによって拡大したことから、より低所得層も日本を訪れるようになった結果、より低価格の商品に関心が移ってきていることも考えられるという。
免税品の総額売上は、先月から前年割れとなっているが、こうした傾向は実は今に始まったことではない。免税品の総額売上は昨年8月を境に、前年同月比での増加幅が縮小しつづけている。予兆は前からあった。最近になって表面化してきたということなのだ。
"爆買い"減速の表面化の理由
"爆買い"の減速が表面化してきた理由は、先に述べた単価の下落のほか、増加傾向にはあるものの購買客数の増加率が鈍化していること、為替相場が円高トレンドに転換していることなども挙げられる。さらには相変わらず訪日外国人観光客の中で割合の高い、中国動向が影響しているだろう。昨年の8月に上海市場で株価が急落、中国当局による資本規制が強化されたことなどが挙げられる。
前回の記事で専門家が指摘したように爆買いはいずれ終焉する。買い物から観光、ゴールデンルートからその他の地域へ、外国人観光客の需要はさらに多様化していく。百貨店には、高額商品を中心とした"買い物"に依存しない戦略で差別化を図ることが今まさに求められている。