都内なら一律460円。歴史を感じる建物もあれば、ミュージアムと紛うほどのモダンな建物も。"はじめまして"の人とも裸の付き合いを通じ、気がつけば家族にも話さないようなことも気楽に話していたり……。我が家にお風呂がある暮らしが一般的になった今でも、銭湯の魅力はまだまだ大きい。
現在、テレビ東京系列で「土曜ドラマ『昼のセント酒』」(毎週土曜日24:20~)が放映されており、「今度、行ってみよう! 」と思っている人も少なくないはず。そこで今回、舞台となった銭湯の一部を少しずつ紹介しよう。
モダンに生まれ変わった老舗銭湯で天然温泉を
まず紹介するのは、7話に登場した「久松湯」(東京都練馬区)。池袋駅から約10分先の西武池袋線「桜台駅」から徒歩約5分の場所にあり、昭和31年(1956)に創業。とは言え、創業当初は温泉ではなく、何度と工事を繰り返す中で2013年に温泉の掘削に見事成功し、翌年の2014年5月にフルリニューアルオープンを果たした。外観に昭和の面影は残っていない。真っ白でスクエアなそれは、美術館か博物館の建築を思わせる。
浴室の中は、白と黒で統一されたモダンなデザイン。白い壁はなんと、プロジェクションマッピングを用いた光のキャンバスになる。男湯にある天然温泉の露天風呂は、「ナトリウム一塩化物強塩」という源泉で、ぬるめで茶褐色の塩気の強い湯である。疲労回復や筋肉痛によく効くが、温泉成分がかなり高いとのことなので、長湯は避けよう。
「東京都には美術館と見違えるほどのモダンな銭湯がある! 露天風呂は天然温泉」
銀座のど真ん中で赤富士を拝む
「銭湯は下町にある」とイメージをしている人もいるだろうが、訪日外国人の姿も多い銀座にも、ちゃんと銭湯はある。それが「金春湯(こんぱるゆ)」(東京都中央区)だ。ドラマでは8話の舞台になっている。金春湯の創業は文久3年(1863)と、都内でも屈指の歴史ある銭湯。ただし、こちらも2014年3月にリニューアルされ、現在はビルの中で展開されている。
男湯の浴室でまず目に飛び込むのは、正面の赤富士のペンキ絵。中島盛夫絵師の作だ。ちなみに、女湯の方にはおなじみの青い富士山が見える。もうひとつ注目したいのは富士山の下、タイルに描かれた鯉の絵。鈴栄堂という九谷焼製造会社が製作したもので、どちらも縁起のいい華やかなモチーフである。
「東京都屈指の老舗銭湯は銀座にあり! 暖簾の向こうには赤富士も」
風格ある門構えの奥でミルク風呂にどっぷり
最後に紹介するのは、本日放映される11話の舞台である高円寺の「小杉湯」(東京都杉並区)。JR高円寺駅から徒歩5分。にぎやかな商店街を通り、一本路地に入ったところに佇む、昭和8年(1933)創業の銭湯である。伝統的な破風屋根とシンボルでもある鯉の懸魚(げぎょ)は昭和の風情そのまま。メディア取材も多く、銭湯の中には有名人の写真も飾られている。
男湯の浴室には、丸山清人絵師が描いた芦ノ湖のペンキ絵が。少しぬるっとした「自然回帰水」は、深井戸水を浄化したやわらかい水で、石けんの泡立ちも良く、美肌効果もあるとか。湯にも工夫が多く見られ、男湯のジェットバスは「別府鉄輪温泉」の湯の華を使った白い濁り湯。そして、小杉湯といえばやはり「ミルク風呂」。客のほとんどが水風呂と交互に温冷浴をしており、ついつい長湯をしてしまう。
「東京都・高円寺の銭湯にはミルク風呂以外にも個性光るサービスがいっぱい! 」
長年東京に住んでいても、銭湯には一度も行ったことがないという人も多いだろう。銭湯の数は減少傾向にあるものの、調べてみると意外にも自分の近所にひっそりとあることも。たまには、ちょっと熱めの湯にどっぷりつかり、著名な絵師の豪快な壁画を味わう、という体験をしてみるのもいいのでは?