日本市場でIoTが普及するためには
では、同社は日本市場に向けて、どのような取り組みを進めているのか。「IoTというと、どうしてもテクノロジーやエコシステム、マネタイズ、データの収集方法といったものに目が行きがちだが、そうした話の前に忘れていけないのが"何が価値となるのか"という点だ。マーケティング分野の有名な格言に"ドリルを買おうとしている人は、ドリルが欲しいのではなく、穴を開けたいのだ"、というものがあるが、我々もそうした顧客が本当に欲しい部分にフォーカスしている」と同氏は語る。すでに同社は成果報酬型のビジネスを標榜しているが、「実は従来型のビジネスの中では、成果を図ることは難しかった。しかし、IoTは粒度の細かいデータをモニタリングできるので、成果を図りやすくなり、顧客にも理解を得やすくなった」としている。
企業の大きさに左右されるのではなく、新たな取り組みや社会へのインパクトを与える取り組みなどを積極的に推し進めることで変革を促していきたいとしており、2015年11月より新たに「オープンイノベーション組織」を立ち上げ、スタートアップや自治体、教育機関などとエコシステムの構築を進めており、今年中にも実例の紹介ができる見込みであるという。
また、そうしたサービスを活用する消費者側の意識もスマートフォン(スマホ)の登場を境に、「自分の情報をネット上に出す、という意識のハードルが圧倒的に下がっている。デジタルの進展によりデータに対する人の感覚が変化してきている」と、大きく変化してきていると指摘する一方で、「個人情報に一定の価値があるという認識が広がってきているが、そのデータを誰が何の目的に使うのか、どのようにそのデータが保護されるのか、という点が懸念されるようにもなってきている」と、ここでもセキュリティのあり方を考える必要性を強調する。
最後に同氏に、IoTをどのように活用したらよいか悩んでいる企業担当者に向けたメッセージを語ってもらった。「アクセンチュアとしては、IoTを活用したいと思った企業に対し、今、自社で強い商品は何かを聞き、それをより輝かせるためにはどうするのかを考えるべきだと述べている。経営資源として、これまで培ってきた顧客基盤があるのだから、決して、隣の芝生が青いと思ってはいけない。製品ビジネスからプラットフォームビジネスへとビジネスモデルを転換したいという話を聞くか、それで成功しているのは製品が輝いている企業だ。我々のところにも、どうしたら良いのか、という相談が日に日に増加している。正直言ってしまえば、IoTに関しては、まだまだこれから出てくる技術が不可欠な初期段階と言える。だからこそ、テクノロジーから入るのではなく、ビジネスケースから入ってもらいたい。また、他社よりも早くサービスを立ち上げたい、という場合には、ラピッドプロトタイピングを活用して、技術の有用性と商業としての成功の確認をしてもらえればと思う」。
なお、同社は研究機関「Accenture Technology Labs(ATL)」も有しており、破壊的イノベーションを有するスタートアップの特定や、そうしたテクノロジーの活用手法などの研究を進めており、IoT分野に向けても、そうした先端技術の早期活用に向けた取り組みなども進めているほか、ユーザーエクスペリエンス(UX)分野の強化に向けた買収なども進めており、IoTデバイスのUIをARやVRと連動させて拡張しようという取り組みなども進めており、全方位的にIoTをビジネスで活用したい企業の成長を支援していきたいとしている。