--BIとアナリティクスが注目されて数年たちますが、なかなか離陸しません。問題はどこにあるのでしょうか?--

Banks氏: 製品の実装と使い方が難しい点に問題があると思います。

多くの企業で、業務にアナリティクスを使っている比率は10~20%にすぎません。アナリティクスにより価値が得られることを考えると、これは残念な現状と言えます。その一方で、社員の約半分がアナリティクスを使いこなし、業績を改善している企業も出てきています。

これまでのアナリティクスは硬く、おもしろくなく、IT部門が設定した形でしかデータを得ることができませんでした。違うビューで見たいと思っても、難しい。ですが、Roambiは直感的にデータを見ることができます。SAPPHIRE NOWでは、われわれの顧客であるRed Bullが販売データを地図に表示してみせましたが、地域別の表ではなく地図上に表示されると何が起こっているのかをすぐに把握できます。

Roambiなどの技術により、今後アナリティクスは一気に普及すると期待しています。

--アナリティクスの分野では、Salesforce.comをはじめ、多数のベンダーが技術を提供しています。SAPのアドバンテージはどこにあるのでしょうか?--

Banks氏: 製品が高額なベンダーもあれば、われわれから見るとアナリティクスの一部しか提供していないベンダーもあります。プランニングだけだったり、BIだけだったり、デスクトップのみしか対応していなかったり、クラウドのみだったり……。これでは、顧客に自分たちの技術や実装方法を押し付けることになるか、さまざまなツールを縫い合わせて利用することを強いることになります。

SAPはBI、予測分析、プランニング、パフォーマンスマネジメントなどの広範な技術を提供し、さらにはS/4 HANAなどの技術と統合もできます。デスクトップでもモバイルでも利用でき、クラウドもオンプレミスもあります。これにより、顧客はデータの存在するあらゆる場所でアナリティクスを利用できます。このように、ビジネス上の問題を解決する本物のアナリティクスを提供している点がわれわれの強みです。

--SAPPHIRE NOWでは、AIや機械学習について多く語られました。これらの技術はアナリティクスをどのように変えるのでしょうか?--

Banks氏: 機械学習はモデルを構築して検証して改善できる重要な技術です。SAPはすでに、予測分析機能としてHANA、Bisuness Suiteにたくさん組み込んでいます。

航空機の例を取ると、他社のアナリティクスでは、何かが起こっているとしか伝えてくれません。そのため、アラートを受け取ったら、担当者は関係者に電話をかけたり、メールで知らせたりする必要があります。

これに対し、SAPの場合、アナリティクスとBusiness Suiteと組み合わせることで、部品の交換が必要とわかったらBusiness Suiteでどこに部品があり、どこに技術者がいるのかを調べてアサインできます。必要によっては、フライトが遅れると顧客に前もって警告する――これらを自動化できます。空港に着く前に知らせるほうが、顧客にとっては便利です。

このように、SAPのアナリティクスは単に警告するだけではなく、次の対策、さらには問題解決につなぐことができるのです。「こんな事態が起こり、システムがこういう対応をとった」と知らせ、この対応を継続するのか、中断するのかと聞くことができます。

マーケティングなら、特定の市場で価格を5%下げて売り上げを50%増やしてはどうか、とシステムが提案します。この提案を全地域に適用するとリスクがあるなら、一部に限定して実施することができます。

つまり、最終的に判断するのは人間であり、機械学習は「こういうことが考えられるが、やるか?」と聞いてくる、という位置付けにあります。機械学習はまだ完全に任せられるレベルにはないため、組み合わせることが大切です。ツールはマーケティング担当、エンジニア、セールスなどを助けてくれますが、引き続き人間が決断をすることに変わりはありません。

--機械学習技術は社内開発ですか? 製品に反映されるのはいつ頃でしょうか?--

Banks氏: HANAでのR言語サポートなど、すでに予測分析機能には機械学習の要素が入っていますが、まだできることはたくさんあり、今後も強化していきます。Hasso(Plattner氏、SAPの共同創業者)を含め、幹部は機械学習を積極的にプッシュしています。プロセスの一部を自動化することで、担当者はより重要なことにフォーカスできます。

今後、R言語など多数のオープンソース技術をベースに、機能を加えていきますし、オープンソースをはじめすぐれた技術があれば利用していきます。

予測分析分野では2013年にKXENを買収しました。Hassoの下でSAP社内での開発、Hassoの教育機関「Hasso-Plattner-Institut」での研究開発の成果を加えています。今後もこの分野の開発を加速していきます。