2011年に起こった東日本大震災から5年がたちましたが、今なお復興が進まずにいる地域もまだまだある状況です。そんな中、今年の4月に熊本でも大きな地震が起こり、たくさんの被害をもたらしました。災害は忘れた頃にやってくるといわれていますが、やはり日頃からの備えが欠かせません。これを機会にもう一度考えてみてはいかがでしょう?
地震保険は万全ではないが、入っておくと安心!
大きな災害が起こるたびに、その備えについて改めて考えさせられますが、時間の経過とともに記憶が薄れてしまいがちです。いざとなったときに困らないためには、思い立ったときに行動を起こすこと。今こそ、災害への備えを見直しておくべきときです。
地震の被害で一番大きいのが、人命はもちろんのこと家屋の倒壊などマイホームの被害です。住む家を失うということは家族の生活のすべてがなくなってしまいますので、被害は甚大です。そうした被害に備えるために、地震保険があります。この保険は単体では加入できず必ず一般の火災保険とセットで加入します。現在、火災保険だけ入っているという人は、その保険に地震保険をプラスすることも可能ですので検討してみてください。
ただ、地震保険に入っていれば地震が来たときにもマイホームは100%安心かといえば、そうではありません。なぜなら、地震で全壊してしまったときにも、全額が補償されるわけではないからです。火災などで自宅が全壊したときには、火災保険に再調達価額で加入していれば、同程度のマイホームを建て直すだけの補償が受けられますが、地震で被害にあったときの補償は最大でその50%(最高5,000万円)までとなっています。つまり、地震などが原因でマイホームが全壊してしまった場合、保険金だけで被災前と同程度の住宅を建て直すことはできません。
だからといって地震保険は役に立たないというわけではありません。入っていたおかげで被災後の生活がかなり助けられたという人が多いと聞きます。特に住宅ローン返済中の人は、地震でマイホームを失ってしまうと多額の住宅ローンだけが残るという最悪の事態を招きかねませんので、そのリスクを避ける意味でも地震保険に入っていた方が安心です。
仮に3,000万円のマイホームが全壊したときにローンの残債が1,000万円あったとしても、1500万円の保険金があればローンを返しても500万円が残ります。これを頭金にして自宅再建に手をつけることもできるでしょう。
地震では家財の被害も大きくなりがちなので、家財も地震保険に加入しておくとより安心です。家財も家屋と同様に再取得価額の最大50%(最高1,000万円)まで加入できます。ただしマイカーの損害補償は家財保険では受けられません。自動車保険の車両保険でも地震による被害は補償の対象外です。
東日本大震災では津波による車の被害もかなり多くありました。そのこともあって2012年には「地震・噴火・津波車両全損時一時金特約」ができ、これをつければ地震での車の損害時に一時金を受け取ることができるようになりました。気になる人は自動車保険の更新時にこの特約を付加できるかどうか確認するといいでしょう。
銀行などではキャッシュカードがなくても10万円まで引き出し可能
では、実際に起こってしまった場合を想定して、マネーの面から日常で備えられることを考えて見ましょう。
とりあえず着の身着のまま避難して、避難所生活を送ることになってしまった場合には当面必要なお金もすぐに準備できないような状況でしょう。すぐに自宅に戻れなかったり、自宅が被害にあっていたりする場合などは、通帳やキャッシュカードが手元に準備できない事態もありえます。
そうした場合にも、銀行では本人確認ができれば1人10万円(ゆうちょ銀行は20万円)までの引き出しに応じてくれます。生命保険会社でも保険証券や印鑑が紛失あるいは消失してしまった場合には、相談に応じてくれます。
本人確認の方法は、金融機関などによって違いますが、運転免許証や保険証などがあれば確実です。何もない場合も罹災証明書で確認ができる場合もあるので、早めに市区町村役場で証明書を発行してもらうといいでしょう。
現金を自宅で保管するのは、特に津波や火災で被害に遭いやすいので、大金の保管は避けた方が無難ですが、当面必要となるくらいのお金は、ふだんから身につけておくと安心かもしれません。特に就寝中に地震が来たときにとっさに逃げ出し何も持って出られなかったということもあるので、枕元など就寝中でもすぐ持ち出せる場所に免許証や保険証とともにキャッシュカードとキャッシュも置いておくようにすると万全です。
堀内玲子
ファイナンシャルプランナー。証券会社勤務後、編集製作会社で女性誌、マネー関連書などの編集を経て93年に独立。96年ファイナンシャルプランナー資格を取得。FPとして金融・マネー記事などの執筆活動を中心に、セミナー講師、家計相談などを行う。著書に「あなたの虎の子資産倍増計画」(PHP研究所・共著)「年代別 ライフスタイル別 生命保険のマル得見直し教室」(大和出版)など。