新年度がスタートして既に2カ月。夏のボーナスの時期でもあります。新年度にあらたに「お金を貯めよう」と決意する人も少なくありませんが、もしもうまくいっていないなら、ボーナスのタイミングで、改めて家計と貯蓄の見直しをしましょう。特に20代、30代の若い世代は、今、貯蓄グセを身につけておくことが大事です。
20歳の貯蓄ゼロ率は60%を超える!
「お金を貯めようと思ったら、いつでもできる」とタカをくくっていると、10年後、20年後も同じことを言っているでしょう。年収が少ないからと言い訳している人も同じです。貯蓄は年収の多い少ないが問題なのではなく、お金を貯める意思が継続しないことにあります。若いうちに貯蓄グセを身につけておかないと、いつまでたってもお金を貯められるようにはなりません。
2015年秋に発表された『家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査]』(金融広報中央委員会)のデータによると、20代で金融資産を持っていない貯蓄ゼロの割合は、62.6%。3人に2人は貯蓄ゼロと回答しています。
30代で45.3%と下がりますが、40代で44.9%、50代でも43.5%と半数近くが貯蓄ゼロという実態が明らかになっています。60代になって34.9%と下がりますが、これは定年退職時の退職金や住宅ローン返済が終わり、ようやく家計に余裕ができたため、貯蓄できる世帯が増えたとも考えられます。それでも、貯蓄ゼロの世帯が約35%というのは、かなり高い数値と言えます。老後資金がなく、果たして年金だけで生活できているのでしょうか。まさに老後破たんと言わざるをえません。
当然、データは同一人物の追跡調査ではないので、若いときに貯蓄ゼロの人が高齢者になっても貯蓄ゼロであるとは言い切れませんが、各年代で貯蓄ゼロの世帯が半数以上あるわけですから、一刻も早く、貯蓄ゼロから脱出しなければ、悲惨な老後を迎えることになっていまいます。
30代で差がつく貯蓄額。早めの対応が不可欠
年代別の保有金融資産額の平均値と中央値をまとめたのが、次の表です。
20歳代で金融資産を保有している人だけの中央値(上と下から順次人数を置いていき、ちょうど真ん中に当たる数値で、平均値より、実態に近い)は180万円。これが金融資産ゼロの人を含むと中央値はゼロ。62.6%もの人が貯蓄ゼロなので、当然中央値もゼロになります。20歳代でゼロと180万円。既にこれだけの差がついているのです。
30代ではその差は更に開き、きちんと貯蓄できている人は500万円まで増やせています。40歳代、50歳代と出費がかさむ時期であっても、貯蓄できている人は、着実に貯蓄額を伸ばしています。
いかに若いうちに、貯蓄グセを身につけておく必要があるか、ということです。
長く続けられることが大事。無理のなり金額からスタートを
今年の夏のボーナスは、平均35万8,409円で前年比0.5%UP、2年ぶりの増加(三菱UFJリサーチ&コンサルティングの調査による)との見通しも出されています。昨年の円安・株高で好業績だった企業が多く、それが反映されていると思われますが、今年に入って一転、円高・株安で今年の冬のボーナスは思わく通りとはならない可能性もあります。
こうしたことを踏まえると、貯められるときに貯めることがベストですが、好調なときをベースに貯蓄プランを立ててしまうと、思うようなボーナス額でなかった場合に、貯蓄プランがとん挫し、お金を貯める意欲がそがれてしまいます。
これから家計・貯蓄の見直しをしようとするなら、まずはムリのない金額からスタートさせるべきです。家計の節約も無理が続くと節約疲れをおこし、リバウンド家計に陥ってしまいます。貯蓄も背伸びし過ぎると、結果的には貯蓄の取り崩しをすることになり、貯蓄の負のスパイラルに。
まずは半年、1万円でも2万円でお金を継続して貯めること。それで家計に無理がなければ貯蓄額を増やしていけばいいでしょう。
貯蓄ゼロの人は、最初の一歩を踏み出すことが、何よりも大切です。
伊藤加奈子
マネーエディター&ライター。法政大学卒。1987年リクルート(現リクルートホールディングス)入社。不動産・住宅系雑誌の編集を経て、マネー誌『あるじゃん』副編集長、『あるじゃんMOOK』編集長を歴任。2003年独立後、ライフスタイル誌の創刊、マネー誌の編集アドバイザーとして活動。2013年沖縄移住を機にWEBメディアを中心にマネー記事の執筆活動をメインに行う。2級FP技能士。