子宮が痛いときに考えられる原因

子宮周辺が痛いときに考えられる、体の変化や病気は?

子宮は、お腹のおへその下の方の、ちょうど足の付け根の少し上あたりの場所にあります。生理痛がある人は、生理のときにこの部分が痛むことから、子宮の大体の位置を意識するはずです。では、生理中でもないのに子宮やその周辺に痛みを感じたら、どんな原因が考えられるのでしょうか。

まずは、体に次のような変化が起こっている可能性が考えられます。

・妊娠の初期症状

過去数カ月以内にセックスしていて、生理が遅れているなら、妊娠している可能性があります。妊娠初期には、子宮が引っ張られるような痛みや、子宮がチクチクするような違和感を覚えることがあります。これらの痛みは主に、赤ちゃんの成長に合わせて子宮が大きくなるために起こるものです。多くは心配のない痛みですが、激痛や出血を伴う場合は、子宮外妊娠や流産の可能性もあります。

・排卵痛

生理と生理の間(生理開始日から13~15日目頃)の時期に、下腹部がシクシク痛む場合は、排卵痛かもしれません。排卵は、卵子が卵巣から飛び出してくる現象。その際に卵巣からの出血が多いと、痛みの原因になることがあります。また、排卵期は卵巣が敏感なので、セックスによる刺激で卵巣出血が起こって痛みが生じることもあります。

子宮の痛みの原因に病気が潜んでいることも

子宮の痛みは、病気ではなくても起きることがある

そのほかに、次に挙げるような婦人科系の病気の可能性も疑われます。下腹部が痛む場合、子宮そのものではなく、子宮に付属している卵巣や卵管に病気があることも珍しくありません。

・子宮筋腫

30代以上の成熟した女性によく見られる病気で、子宮の筋肉内に良性の腫瘍(しゅよう)ができて徐々に大きくなります。初期段階では、生理痛がひどくなる、生理が長く続く、生理のときの経血量が増えるといった症状が見られます。筋腫が大きくなって周囲の臓器を圧迫すると、生理中以外でも、下腹部の痛みや腰痛を引き起こしたり、出血を伴ったりすることも。また、便秘や頻尿になる場合もあります。

・子宮内膜症

子宮内膜症は、子宮内膜に似た組織が、子宮の横にある卵巣や大腸や小腸を覆う腹膜など、子宮以外の場所にできて増殖し、炎症や癒着を起こす病気です。卵巣内に袋のような組織ができて血液がたまる「チョコレート嚢胞(のうほう)」も子宮内膜症の一種。子宮筋腫と並んで女性に多い病気で、近年、20代から40代の女性の間で増加しています。生理のたびに生理痛がひどくなるのが特徴で、経血の量も増加します。病気が進行すると、生理以外のときでも下腹部痛があったり、セックスのときに痛みを感じたりすることもあります。

子宮の痛みには、深刻な病が潜んでいる場合も

・卵巣のう腫

卵巣に液体が溜(た)まる部分ができて、卵巣が腫れる病気です。初期にはほとんど自覚症状がありませんが、進行すると、生理とは関係なく下腹部に痛みや違和感が起こることがあります。さらに大きくなって、腫れた卵巣がねじれ (卵巣茎捻転)を起こし、急激な痛みが起こることも。その場合は緊急手術が必要になります。

・性感染症による子宮付属器炎、骨盤腹膜炎

クラミジアや淋菌(りんきん)などの性感染症によって膣の内部で炎症が起こると、それが卵管や卵巣にまで進んで「子宮付属器炎」になる場合があります。さらに炎症が骨盤腹膜にまで広がると、「骨盤腹膜炎」になります。発熱を伴って、急に下腹部に痛みが起こる場合は、これらの性感染症による炎症の恐れがあります。

そのほか、子宮頸がんや子宮体がんといった悪性腫瘍が原因で痛みが起こっている場合もあります。子宮や下腹部に違和感や痛みがあるということは、体に何らかの変化が起こっているサインです。子宮や卵巣の病気を放置すると、将来、不妊の原因になることが少なくありません。激しい痛みはもちろん、小さな痛みも見逃さず、産婦人科や婦人科で相談するようにしてください。

※画像は本文と関係ありません

記事監修: 水本賀文 医師

駅前三軒茶屋 みずもとレディースクリニック院長
昭和61年3月に防衛医科大学校卒業後、昭和63年6月に自衛隊中央病院産婦人科に赴任する。途中、防衛医科大学校医学研究科(大学院)およびドイツハンブルグ大学付属研究所に留学する。平成11年10月に自衛隊中央病院に復帰し、平成19年3月からは産婦人科部長として勤務する。平成26年9月に世田谷区三軒茶屋で開業に至る。


資格・所属
母体保護法指定医師/日本医師会認定産業医/日本産科婦人科学会専門医/日本内分泌学会内分泌代謝専門医・指導医/日本臨床栄養学会臨床栄養指導医/医学博士

役職
自衛隊中央病院非常勤医師/社団法人関東連合産科婦人科学会編集幹事/公益社団法人日本産婦人科医会幹事