今夏の登場を控えるWindows 10 Anniversary Updateは、2015年11月12日のWindows 10 November Updateに続く2回目の大型アップデートにあたる。「Redstone」の開発コード名が与えられ、Windows Insider Programにおいて着々と機能を向上させてきた。

Insider Previewのレベルは、Fastリング、Slowリング、Release Previewリングの3段階がある。Release Previewリングは文字どおり完成直前のビルドを選択するリングだが、Microsoftは米国時間6月1日にWindows 10 Mobile ビルド10586.338をRelease Previewリングを選択しているユーザーに公開した。そもそもRelease PreviewリングはThresholds 2の時代は提供機会も多かったが、現在のRedstoneでは、Windows 10 Mobile ビルド10586.338が初めてとなる。

Windows 10 Mobile ビルド10586.338。あらためて気付いたが、Windows 10 Mobileでは「Insider」ではなく「Technical」という名称になっている。筆者は確認していないが、後日PC版もリリースされたようだ

さらに同日、Windows 10 Insider Preview ビルド14342のISO形式ファイルを提供し、Windows 10 Anniversary Updateの完成が直前にまで至っていることが容易に汲み取れる。

Windows Insider Program参加者向けに公開したWindows 10 Insider Preview ビルド14342のISO形式ファイル

その最中Microsoftは、Windows Insider Programのチームリーダーが、CVP Engineering Systems TeamのGabriel Aul氏から、WDG(Windows and Devices Group) Software EngineerのDona Sarkar氏に交代することを公式ブログで発表した。

Aul氏によるとチームリーダーの役割は、Windows 10をビルドするチームエンジニアが使用するツールに責任を持ち、プランニングとワークマネージメントを担当。さらにソースコード管理やビルド基盤、自動化システムも合わせて担当するという。約2万平方メートルの敷地の中で1日あたり35EB(エクサバイト)のデータが飛び交うそうだ。

だが、Aul氏はインサイダーとのコミュニケーションなどに時間を費やした結果、本来の業務を100%実行することができないという。そのため、Windows Insider ProgramのチームリーダーにSarkar氏が就任する結果に至ったと説明している。ちなみにAul氏はWindows Insider Programに関与するが、舞台裏に引っ込むそうだ。

Gabriel Aul氏(右)とDona Sarkar氏(左)。写真が粗くて確認できないが、手渡ししているのはMinecraftのRedstoneボタンのように見える(公式ブログより)

こちらのWebページによれば、2005年にAutodeskからMicrosoftへ転職したSarkar氏は、当時のWindowsチームにソフトウェアエンジニアとして参加し、「無条件のデバイスハードウェアギーク」を自称する彼女はWindows Vistaの自動再生機能や、その後のWindowsにおけるBluetoothとBlu-Rayの統合といった機能のリード開発者として名をはせてきたという。Windows 8の検索機能やアプリケーションデータのローミングやバックアップなどユーザープロファイル管理機能の改善(社内では「魔法」と呼ばれていた)、Windows 10でもドライバー署名ポータルを担当した。その後もMicrosoft HoloLens開発チームに参加し、現在に至っている。

こちらはAul氏のTwitterに投稿した写真。「正直、手放すは難しい」とボタンの押し付け合いをしているように見える

今回のチームリーダー交代を経てSarkar氏は同日、Fastリングを選択したインサイダー向けにWindows 10 Mobile Insider Preview ビルド14356をリリースしたことを公式ブログで発表した。詳細はリンク先で確認してほしいが、新機能は以前から発表していたCortanaとPCとの連動に留まり、Windows 10 Mobile自体はバグフィックスが中心となっている。

Sarkar氏の指揮下に期待を馳せつつ、Windows Insider Programに変化が生じるのか注目し、興味深い事例を発見できたら本レポートで報告したい。

阿久津良和(Cactus)