今回訪れたのは、東京都杉並区の「天狗湯」。JR中央・総武線「西荻窪」駅から歩いて7~8分。朱文字で屋号が書かれたクリーム色の庇(ひさし)のある建屋は、どちらかといえば地味な方だが、だからこそ一層、玄関左右のブロック塀に描かれた富士山のペンキ絵(絵師: 田中みずき氏)に魅力を感じる。
ゆったりした脱衣所でのんびり
天狗湯の斜向かいには小学校があり、ファミリー世帯が多く暮らす、閑静な住宅街の銭湯である。コインランドリーは併設。使い込まれたおしどり錠の下足箱に靴を入れ、自動ドアから中へ。
天狗湯はフロント式。そもそも杉並区に番台の銭湯はもう残っていない。ロビーは広くはないが、テレビやソファ、ドリンクケース、タオル類の販売など一通りそろっている。男湯は右、女湯は左の脱衣所へ進む。
ロッカーは壁側の一面と境目側に少し。平日の16時頃の訪問で、相客は7~8人だった。暑い日だったので、扇風機が休みなく回っている。背側にはぶら下がり健康器、マッサージチェア、マンガ本の棚に、ごく小さな坪庭が。中央には腰掛け台が2脚。境目側に洗面台とデジタル体重計、keihoku製の灰色のはかりもある。天井は存外に高く、窮屈さのようなものは感じられない。
富士山とカモメのモザイクタイル画を眺めながら
浴室へ。壁や天井は茶色の板のような風合いの材が張られていて、落ち着いた雰囲気がある。男女共に正面には、額にはめられた丸山絵師による富士山のペンキ絵(作: 2015年12月25日)があり、2灯のスポットライトで照らされている。その絵の下には、昔ながらの広告看板も並ぶ。男女境目壁には、カモメが飛ぶ海の風景を描いたモザイクタイル画。
ちなみにこちらで使われているケロリン桶は、関東より一回り小さい関西サイズ。関西では浴槽から直接かけ湯をする習慣があるため小さくて持ちやすいサイズで、とのことだが、天狗湯に置いてあるのは遊び心からだろう。
浴槽の湯は銭湯的にはどれもぬるめで、体感では43度に届かないくらいだと思う。ミルクバスはビタミンEとオリーブオイルが配合された白濁色の薬風呂。ジェットやバイブラの具合も良好。左端の深風呂は手前側に段差があり、半身浴を楽しめるつくりになっている。浴槽の脇には玉石が敷き詰められた足ツボマッサージコーナーもあり、身体の疲れをほぐしながら、ゆっくりと長湯ができる風呂になっている。
西荻窪駅周辺は商店街が充実しているので、湯上がりの冷たい飲み物でも一杯、楽しむのもよし。汗をたくさんかくこれからの季節、心身ともにさっぱり洗い流したい。
※記事中の情報は2016年5月時点のもの。イメージ図は筆者の調査に基づくもので正確なものではございません
筆者プロフィール: 高山 洋介(たかやま ようすけ)
1981年生まれ。三重県出身、東京都在住。同人サークル「ENGELERS」にて、主に都内の銭湯を紹介した『東京銭湯』シリーズを制作している。