親であれば、誰もが気になる「教育費」。「いざという時は、奨学金があるから大丈夫! 」なんて思っていませんか。今回は、奨学金を借りる際の落とし穴や、借金をせずに教育費を作る方法を4回にわたってご紹介。子どもが小さいご家庭は特に、今のうちからできることをしっかりと行っていきましょう。

大学授業料は30年前の2倍に - 2人に1人以上が奨学金を借りている

国公立大学で約82万円、私立大学(理系)では約150万円

日本学生支援機構もしくは大学の奨学金を利用している人の割合は、大学学部生(昼間)で約51%となっています(日本学生支援機構「平成26年度学生生活調査」)。2人に1人以上の学生が奨学金を利用していることになり、30年ほど前と比べるとその割合は2倍以上。驚異的な伸びを見せていることがわかります。

なぜ利用者は増えているのか。その背景には、大学の授業料が高いことも一因としてあるのではないでしょうか。文部科学省の調査によれば、各大学の平均初年度納付金は国公立大学で約82万円、私立大学(理系)では約150万円と、30年ほど前の2倍以上に値上がりしています。そのため、奨学金は教育費が必要な親子にとって欠かせない制度。一方で最近では、大学を卒業した若者が奨学金を返すことができないという問題をニュースで目にすることが多くなってきました。

残念ながら、現在の奨学金は返済が必要な「貸与型」が多いのが実情です。国の奨学金制度である「日本学生支援機構」も「貸与型」。利子のつかない「第一種」と卒業後に利子をつけて返さなくてはならない「第二種」が代表的なものとなっています。

返せない金額ではないけれど……結婚や住宅購入の足かせになることも

公的な制度、民間の制度の中に、貸与型・給付型などがある

では、一体いくら貸与を受けることができ、いくら返済をする必要があるのでしょうか。具体的な金額で見てみましょう。多くの人が借りている「日本学生支援機構 第二種奨学金(有利子型)」は、貸与月額が「3万円・5万円・8万円・10万円・12万円」に分かれています。例えば、毎月10万円を借りるコースを選んだ場合、4年間で480万円を借りることになります。利率は卒業時に固定型か変動型かを選ぶことができ、上限は3%。仮に固定型で1%の利子だと想定すると、返済総額は約532万円になり、毎月2万2,172円を20年間かけて返していくことになります。

超低金利時代の恩恵を受けて、現在の固定金利は1%を大きく割り込んでいるため、住宅ローンやその他の民間ローンと比べると、奨学金は比較的、良心的な制度です。「とても返せない金額ではないだろう」と感じられるかもしれません。しかし、奨学金の返済が子どもの将来の家計に大きな影響を与えていることも事実です。

「2人に1人以上が奨学金利用者」ということは、例えば結婚を決めた夫婦2人とも奨学金を返済しているケースが珍しくありません。もし2人ともに、月額貸与10万円(金利1%)の奨学金を借りていた場合、家計に占める月々の返済額は約4万4,000円。これが42歳になるまで続くことになります。結婚後、住宅購入や子どもを何人持つかなどのライフプランに、大きな影響を及ぼす可能性があるのです。

利率を1%とした場合の返済総額と月々の返済額

奨学金は"借金"である

奨学金を利用する上で大切なことの1つは「返済の計画を立てること」です。奨学金という名前でも「借金」であるということを親子で認識しましょう。また「子どもも納得して」借りましょう。

また、大学で何を学びどう仕事にいかしていくのか。奨学金をきっかけに親子で話し合うことも大切なのではないでしょうか。そのような意識がなかったために、大学入学後に留年・成績要件で奨学金がストップし、中途退学したという大変深刻な例もあるからです。

さて次回は、「奨学金を借りていれば大丈夫! 」という親にとって抜け落ちているであろう「奨学金の意外な落とし穴」についてご紹介します。

著者プロフィール

マイライフエフピー代表 加藤葉子
子育て真っ最中のファイナンシャルプランナー。子どもを授かったことをきっかけに、教育費や学資保険の仕組みなどに興味を持ち、ファイナンシャルプランナーの勉強を始め、3年で子どもの教育資金を貯める。現在は、全国の女性からの教育費・老後資金・起業・離婚・投資なのお金の相談を中心に執筆・マネー講師として活動しながら、ファイナンシャルプラナ―の育成にも力を入れている。自身のホームページ「女性とシングルマザーのお金の専門家」でもお金にまつわるお役立ち情報を提供している。