KDDIは31日、都内で新商品発表会「2016 Summer ~CHANGE!~」を開催し、2016年夏モデル、新サービス、新プログラムを発表した。「auは、大きく変わる。」というメッセージが強く打ち出された、今回の発表会。auでは、何を変えようとしているのだろうか。

KDDIは31日、都内で新商品発表会「2016 Summer ~CHANGE!~」を開催。「auは、大きく変わる。」というメッセージが強く打ち出された

au STAR開始の理由とは?

新商品発表会にはKDDI 代表取締役社長の田中孝司氏が登壇した。2016年夏モデル第1弾として発表されたのは、スマートフォン5機種、タブレット1機種、フィーチャーフォン1機種、Wi-Fiルータ1機種。また新サービスとして、海外でデータ通信が980円/24時間(免税)で行える「世界データ定額」が8月からスタートすることがアナウンスされた。

2016年夏モデルとして、スマートフォン5機種、タブレット1機種などがラインナップ(左)。また、海外渡航者向けに「世界データ定額」が始まる(右)

この日の発表会では、新プログラム「au STAR」の説明に多くの時間が割かれた。優先予約をすることでauショップで希望の応対をしてもらえる「au STAR パスポート」、利用年数に応じてポイントが付与される「au STAR ロイヤル」、特典やポイント交換サイトなどが用意される「au STAR ギフト」の3サービスで、8月より順次スタートする。このau STARというプログラム、auらしいと言えばauらしいのだが、地味といえば地味な内容だ。何か目新しいことが始まるのではないか、と期待していた人にとっては、がっかりする内容だったかもしれない。

「auは、大きく変わる。」というスライドは、今回の発表会で都合4回も使われた(左)。新サービス「au STAR」は、地味といえば地味な内容(右)

KDDIがこの時期に同プログラムを発表した理由について考えてみたい。まず大きな理由として、市場のニーズが変わりつつあることが挙げられる。「あたらしい自由 au」をスローガンにした2012年当時、モバイル市場はスマートフォンの需要増に沸き返っていた。それに呼応するようにKDDIでもauスマートバリュー、auスマートパスなどを矢継ぎ早で開始。その後もau Market、au WALLET、au ひかりなどを追加、利用者の獲得に全力を傾けてきた。しかし、auスマートフォンの浸透率が2012年当時の3倍近くまで伸びた現在、市場のトレンドは別の方向を向きはじめている。

スマートフォンの新規契約は鈍化しており、また競争環境の変化により大手3キャリア間のMNPによる流動がなくなった。加えてMVNOの台頭により、大手キャリアでは利用者流出の傾向が出てきた。そう考えれば、KDDIがこのタイミングで既存の利用者に向けたサービスを打ったのは、むしろ自然な流れと言える(長期契約者に対する優遇は総務省からの提言でもあるのだが)。壇上の田中社長は「今後は、これまで構築してきた通信サービス基盤の上で、利用者一人一人の体験価値を向上させていく」と説明していた。

au STARギフトでは、「誰でも割」の2年契約を更新した後も利用を継続することでギフト券が付与されるサービスなどを用意。既存の利用者に向けたサービスだ

au STARロイヤルでは、4年以上の長期利用者にau WALLETポイントが還元されるといった特典を用意。やはり既存の利用者に向けたサービス内容となっている

また、「実質0円」や「キャッシュバック」をともなう販売方法が事実上の禁止扱いとなり、これによりauショップの来店者が減ったことも、au STARの構想を後押ししたものと思われる。全国に展開するauショップを顧客との重要なタッチポイントと考える同社。2月の決算発表会で田中社長は「auショップへの来店者減は頭の痛い問題」と、また5月の決算発表会で「auショップに来ていただけるような、おもてなしを考えている」と話していた。au STAR パスポートでは、優先予約により来店日時が選べるほか、あらかじめショップ店員の対応(詳細な説明をして欲しいのか、簡易的な説明で短時間で終わらせて欲しいのかなど)を選ぶことができる。そこからは個々のニーズに向き合うことで、より利用しやすい環境を作っていきたいという思惑が見てとれる。

優先予約により来店日時が選べ、ショップ店員の対応を選ぶことのできるau STAR パスポート

果たしてこれらの新プログラムにより、顧客の流出は止まり、遠のいたショップへの客足は回復できるだろうか。ちなみに今回の3サービスは第1弾という位置付け。au STARでは今後も、「長くつきあうとイイコト」のサブタイトルにしたがったサービスが追加されていく見込みだ。

本当に“お客様”の声を聞いてきたのか

プレゼン後に行われた質疑応答で、田中社長は「CHANGE!」「auは、大きく変わる。」「長くつきあうとイイコト」といったスローガンを掲げた理由について、改めて説明している。

プレゼン後に行われた質疑応答で、記者団からの質問に回答する田中社長ら

田中社長によれば、いま利用者の気持ちはかつての「スマホを持ちたい」から、「スマホを持ってどう使っていくか」または「もうスマホはいい」の、どちらかに二極化しつつあるという。つまり、スマートフォンを使いこなしている層に向けたサービスが充実した一方で、スマホ初心者にその楽しさが伝えられていない、ということだろう。こうした背景を受け、KDDIでは「私たちは本当にお客様の声を聞いてきたのか。個々のニーズに対応してきたのか。いつの間にかワクワク感、新しいことチャレンジする気持ちが弱くなっていたのではないか」と大反省したという。そこで「時間をかけて会社全体を変えていく宣言させていただいた」と田中社長。「急に全店舗を変えるのは難しいが、時間がかかってもやっていく。まずは500店舗を変えていきたい」と説明していた。

ゲストを招いて行われたフォトセッションの様子