核家族化が進む中、推進される女性の社会進出。家事育児は誰が担えばよいか。夫婦での家事の分担率について民間企業が調査したところ、専業主婦の家庭と共働き家庭では分担率の差はほとんどなかった。増える女性の負担をどうしたら緩和できるか。国も企業もこの社会的な課題にビジネスで応えようとしている。
“女性活躍”重点方針に家事支援サービス
5月20日、首相官邸で開かれた「すべての女性が輝く社会づくり本部」で「女性活躍加速のための重点方針2016」が決定した。この方針は、「女性活躍推進法や第4次男女共同参画基本計画などに基づく取組の加速化とターゲットの拡大」を目的としている。何が大事か。今後この方針を基に各省庁の予算の概算要求が出されるのだ。方針には今年初めて、子育て基盤を支えるための商品開発や家事支援サービスに対する内容が入った。この分野の旗振り役を担う経済産業省では現在、10数社規模の企業連携を作るといったことを構想中だという。
国は家事支援サービスの利用を推進
2014年6月24日に閣議決定された「『日本再興戦略』改訂2014」において、“女性活躍”社会を実現するための1つの方策として、安価で安心な家事支援サービスを利活用できる環境整備を図ることが掲げられている。そのための具体策として「家事支援サービスについて、品質確保のための業界による自主的取組への支援等を通じ、利用者負担が低い、安心なサービスが供給される仕組みを構築するため、主要事業者で構成される推進協議会を設置し、年度内に具体策を検討し、一定の結論を得る」ことが明記されている。
ただ、利用者を増やすための課題は多い。野村総合研究所が行った「家事支援サービスに関する利用者アンケート調査(2014年)」によると、70%が家事支援サービスの存在を認知しているものの利用しておらず、実際に利用したことがあるのは3%のみ。ほとんど利用されていない。その理由については、「価格の高さ」を挙げる人が多かった一方、「他人に家事等をまかせること自体への抵抗感」「他人を家に入れることへの抵抗感」「セキュリティ等への不安感」といったことも挙げられていた。
経産省は、こういった課題を解決し、家事支援サービスを利活用しやすい環境整備を図ることを目的として2014年7月に「家事支援サービス推進協議会」を設置、検討を行った。協議会では「家事支援サービス事業者ガイドライン」を策定。その中で事業者が担保すべき項目を整理、先進的な事業者において実際に実施されている取組を参考にできるように対応事例を挙げている。しかし、事業者に対するこのガイドライン自体の周知に課題が残っているという。