4月末の日銀の追加緩和見送りを受けて、5月のマーケットは大幅な円高と株安で始まった。しかし、その後は比較的落ち着いた動きとなっている。仙台G7や伊勢志摩サミットなどは注目されていた。ただ、具体的な世界経済のテコ入れ策への期待は盛り上がらず、これまでのところ金融市場はあまり材料視していない。
さて、6月は相場材料が目白押しだ。
1日には、安倍首相が衆院解散や消費増税再延期に関する判断を説明するとのこと。増税再延期となれば、景気へのプラス効果を評価して株価が上昇することになるのか。それとも、財政再建の遅れを嫌気して債券市場が警告を発するのだろうか。株や債券の動きに合わせて、為替相場にも影響が出そうだ。
7日には、米国で2月から続いてきた大統領予備選が終了する。民主党の大統領候補はクリントン氏、共和党はトランプ氏で決まりだろう。ただ、今年はどちらの党も、予備選を経て党内の求心力が高まって挙党態勢が出来上がるという従来のパターンからは大きく外れているようだ。
前国務長官ながら、サンダース氏の健闘により左寄りの姿勢を強めるクリントン氏に、反主流で過激な発言を繰り返すトランプ氏。このまま何事もなく、7月下旬の両党の党大会で正式候補に指名されて、11月の本選挙に向けたキャンペーンを本格化させるのだろうか。
14~15日には、米FRB(連邦準備制度理事会)が金融政策を決定するFOMC(連邦公開市場委員会)が開催される。少し前までは政策金利を据え置くとの見方が支配的だったが、ここへきて関係者の発言などを受けて利上げ観測が高まっている。市場が織り込む利上げ確率は3割程度だが、それがさらに上昇するかどうか。3日に発表される5月分の雇用統計も政策判断に大きな影響を与えるかもしれない。
15~16日には、日銀の金融政策決定会合。FOMCの結果発表から半日を経たずして、日銀の会合の結果が発表される。4月の会合後は、追加緩和期待が裏切られたことで金融市場は激しく反応したが、次回はどうか。「為替レート(の操作)を目的にしない」とのG7、あるいはG20の合意の枠内で、一段の金融緩和に踏み切るかどうかが注目される。
日米の金融政策に影を落としているのが、23日の英国の国民投票だ。英国のEUからの離脱の是非を問う国民投票の結果次第では、金融市場が大きく反応する可能性もある。BOE(英国中央銀行)の分析では、昨年11月以降のポンド下落分の半分は国民投票に関わる不透明感で説明できるとのこと。EU残留が決まれば、ポンドは相応に上昇するかもしれない。一方で、EU離脱の場合、BOEによれば「ポンドはさらに、おそらく激しく、下落する」公算が大きい。
英国の国民投票という大きな不透明要因があるため、日米の中央銀行がそれより前の会合で政策判断を保留する可能性もありそうだ。
もちろん、ここで挙げた以外にも、サプライズの材料が飛び出しうるのが相場の常だ。投資家は様々な方面への注意を怠れない。
執筆者プロフィール : 西田 明弘(にしだ あきひろ)
マネースクウェア・ジャパン 市場調査部 チーフエコノミスト。1984年、日興リサーチセンターに入社。米ブルッキングス研究所客員研究員などを経て、三菱UFJモルガン・スタンレー証券入社。チーフエコノミスト、シニア債券ストラテジストとして高い評価を得る。2012年9月、マネースクウェア・ジャパン(M2J)入社。市場調査部チーフアナリストに就任。現在、M2JのWEBサイトで「市場調査部レポート」、「市場調査部エクスプレス」、「今月の特集」など多数のレポートを配信する他、TV・雑誌など様々なメディアに出演し、活躍中。
※写真は本文と関係ありません