5月24日、Apple Store銀座で「FileMaker 15新製品発売イベント」が開催された。もちろん、5月11日にFileMaker 15プラットフォームが提供開始になったことを受けたものだ。Apple Store銀座のシアターが満席となる盛況の中、FileMaker 15の新機能のほか、新しいライセンスモデルなどについても紹介された。

ファイルメーカー社も自社の問題をFileMakerプラットフォームで解決した

まず登場したのは、ファイルメーカー・North Asia Sales Directorの日比野暢氏。この日の来場者の多くがすでにFileMakerを使っていることもあり、主にFileMakerの現状や日本での状況が語られた。

North Asia Sales Directorの日比野暢氏

FileMakerプラットフォーム製品の出荷数は2,400万本、FileMaker Goのダウンロード数は200万回をそれぞれ超えているが、実は日本市場は世界全体の4分の1を占めている。そのため、日本のユーザーからのリクエストが製品に反映することも少なくないそうだ。以前からある機能としては濁点の有無やひらがな/カタカナなどを区別せずに検索できる日本語独自の「ゆるやかな検索」、そして最新のバージョン15ではESSアダプタなどがこれにあたる。

また、日本では現在、企業内でFileMakerソリューションを作るインハウスの開発者と、専門の開発業者に依頼するアウトソーシングとの割合が半々程度だが、インハウスの開発者が増える傾向にあるという。ちなみに米国ではすでに7割程度がインハウスの開発者だそうだ。そこで無料のハンズオンセミナーやWebセミナー、160社を超える開発パートナー企業と協力して実施しているワークショップなど、FileMakerプラットフォームでの開発を手がける人、これから始めたい人を積極的にサポートしていることが紹介された。

非効率なプロセス、情報が分散、柔軟性が低いといったビジネスの課題を解決する上でFileMakerの強みが発揮されるという

ファイルメーカー社自体が数年前までは注文を処理するための紙の書類で埋もれていたが、FileMakerを使うことで今ではペーパーレスを実現し、処理のミスもなくなったという。高額な開発費用をかけることなく自社の業務フローに最適なソリューションを構築できるFileMakerプラットフォームを活用してほしいと、日比野氏は来場者に呼びかけた。

開発の手間はかからないが自社に合っているとは限らないApp Storeのアプリ(右下)と、自社に合わせて作れるが費用も手間もかかる専用アプリ(左上)。FileMakerなら簡単で、しかも自社に最適なソリューションを作れる(右上)

新機能を5つのポイントで紹介

続いて同社マーケティング部シニアマネージャーの荒地暁氏が登場。FileMaker 15の新機能には大きく分けて5つのポイントがあり、この5つのポイントごとにデモをまじえて紹介された。

マーケティング部シニアマネージャーの荒地暁氏

新機能のポイントは、モビリティ、自動化と統合、使いやすさ、パフォーマンス、セキュリティの5つ

モビリティ

FileMaker Goの新機能、そしてスマートフォンのブラウザにも対応したことが紹介された。

FileMaker GoでカスタムApp(ファイル)を開く際に、キーチェーンやTouch IDを利用するかどうかを設定できる

Touch IDを設定すると、次回からは指紋で認証して開ける

iPhoneの3D Touchにも対応。アイコンを強く押し、ここからすぐに目的のカスタムAppを開ける

App Extensions対応では、他のアプリとのデータのやりとりと、クラウド上のドライブの利用について紹介された。

FileMakerのオブジェクトフィールドに保存されたPDFファイルを他のアプリ(ここでは「PDF Expert 5」)に渡し……

「PDF Expert 5」で編集したものをFileMakerに戻すデモ

FileMaker Goからクラウドのドライブにあるファイルを利用したり、逆にFileMakerのファイルをクラウドのドライブに保存したりすることができる

美術館などさまざまな場面でこれから活躍しそうなのが、iBeaconの対応だ。単にビーコン端末との間で信号をやりとりするだけでなく、FileMaker 15で新たに追加された「RangeBeacons関数」によってビーコン端末との距離を取得できるようになっている。

この機能を使うと、ビーコン端末との距離に応じて処理を変えられる

そしてFileMaker ServerのWebDirect機能がスマートフォンのブラウザにも対応したことが紹介された。

画面上部にあるボタン類は、標準で用意されているUI。これはレスポンシブで、デバイスの縦横の回転にも自動で対応する

自動化と統合

スクリプトワークスペースの向上や、ESSアダプタによりPostgreSQLやIBM DB2にも接続できるようになったことが解説された後、スクリプトワークスペースのデモがあった。

スクリプトワークスペースのデモ。キーボードからのスクリプトステップの入力、エラーチェックと強調表示、操作の取り消しとやり直しなどが紹介された

使いやすさ

FileMaker 15には、これからFileMakerを使う人にとって心強い機能が多く追加されている。

Webベースに生まれ変わったヘルプ。ダウンロードしてオフラインで参照することもできる

4つのシンプルなStarter Solutionが新たに追加。たとえば「連絡先」はテーブルが1つだけで、リレーションも設定されていない

シンプルなStarter Solutionは、すぐに使い始めることができ、作り込まれている部分が少ないためカスタマイズも容易。データベースの使用やカスタマイズに慣れるために適した題材といえるだろう。

セキュリティ

SSL証明書タイプのサポートが増えたことなどの解説に加え、セキュリティの事前警告や、パスワードの設定や入力などが必要な場面で文字の代わりに黒丸を表示するマスク付き編集ボックスのデモも実施された。

無効な証明書が使用されている場合などに警告が表示される

パフォーマンス

ポータルでのデータの読み込みなど時間のかかる処理に進行状況のアニメーションが表示されるようになった。アニメーション自体もUIとして重要だが、実は読み込みを待ちつつ入力作業も同時にできるというように改善されたことが大きな変更点といえる。

ポータルのフィルタリングとソートでは、アニメーションが異なる

アニメーションはポータルのサイズに応じて表示される

また、最長呼び出しの使用状況ログでは、どのような処理に時間がかかったかのログが残るので、開発や改修に役立つ。 この後、FileMaker 15の新機能も多く取り入れたフィットネスクラブのカスタムAppが紹介された。おそらく参加者ひとりひとりが、自分自身、あるいは自社での利用シーンを具体的に頭の中に思い描いたのではないだろうか。

新しいライセンスモデルはユーザー数ベースでシンプル

再び日比野氏が登場し、FileMaker 15から新たに追加されたFileMaker Licensing for Teamsの説明があった。ユーザー数ベースでライセンスを購入するシンプルなモデルで、これから導入する企業のために選択肢を増やしたものだという。

ユーザーがさまざまなクライアントからサーバーに接続することを想定した新しいライセンスモデル

この後、開発パートナー企業として、株式会社寿商会代表取締役社長の若林孝氏と、株式会社U-NEXUS取締役CMOの横田志幸氏が紹介された。

FileMaker 15の注目の新機能として、若林氏はiBeacon、横田氏はApp Extensionsを挙げていた。こうした最新機能を取り入れたカスタムAppなど、開発のアウトソーシングが必要な場合にはパートナー各社の協力を得ることもできる。

株式会社寿商会代表取締役社長の若林孝氏(右)と、株式会社U-NEXUS取締役CMOの横田志幸氏(左)

イベント終了後は、来場者が、ファイルメーカー社やApple Store、開発パートナー社のメンバーと名刺交換や相談をしている様子が多く見られた。実際に動作するデモを見られるだけでなく、このようなつながりが得られることも、イベントに参加するメリットのひとつだ。 同イベントは今後6月上旬にかけて、仙台、福岡、表参道のApple Storeで開催される。事前申し込みで満席になる場合もあるが、詳細はファイルメーカーのWebページで確認の上、参加してみてはいかがだろうか。