長距離を通勤する人は、座ってちょっと一息、といきたいことも多いだろう。以前、このページでJR東日本の普通列車のグリーン車について紹介した(参考: 普通列車グリーン車でほっと一息、リッチな気分に)。普通列車のグリーン車は指定席ではなく、必ずしも座れるとは限らない。
では、通勤に使える列車で、最高のサービスを受けられる列車はどこなのかということになると、小田急電鉄の「ロマンスカー」ということになる。
かつては箱根への直行列車がメインだったロマンスカーも、現在では途中駅にこまめに停車するようになり、さまざまな乗客の「着席したい」という需要に応えている。
ロマンスカーのサービス
ロマンスカーには、どんなサービスがあるのか。まず、ロマンスカーは「全席指定」である。駅の窓口や券売機で指定席を購入することができる。また、「ロマンスカー@club」や「e-Romancecar」といったオンライン予約システムでは、指定席をオンラインで予約できる。しかもこれらのサービスでは、チケットレスで乗車することができ、しかも前者ではポイントを貯めることが可能だ。後者はポイントを貯めることはできないものの、会員登録なしで使用することができる。
そんな着席サービスも、決して高価格ではない。運賃の他に、新宿から相模大野までは410円、本厚木までは570円、秦野までは620円、新松田までは690円の追加料金を払えば乗れる。なお、箱根湯本までは890円だ。なお、JR東日本の通勤用快速列車「ホームライナー」の料金は、510円だ。こちらは座席は指定できない。
そしてロマンスカーのサービスの特徴としては、車内販売の充実があげられる。列車によっては車内販売のワゴンサービスが乗車していないものがあるものの、車内販売の有無は小田急の公式ホームページで確認することができる。
しかもJR東日本の普通列車グリーン車は簡単な飲み物とお菓子程度なのに対し、こちらではお弁当やあたたかいコーヒーなども販売されている。
ただし、ワゴンサービスがあるものは昼間の時間帯の列車が多いことには注意していただきたい。
何かを考えるにはロマンスカー
列車の中で、何かを考えたいという場合には、気ぜわしい通勤列車だとちょっとつらい。まして、立って乗っているとそれどころではない。必ず座れるロマンスカーは、仕事のこと、人生のことを考えるのには、たいへん便利な場所だ。
先日、筆者も町田から新宿までの間、ロマンスカーに乗車してきた。町田の駅でロマンスカーを待っていると、ホームにすべりこんできたのはEXEという車両だ。ロマンスカーの象徴である展望席はないものの、座席数が多いため通勤客をメインとする「ホームウェイ」でよく使われる車両である。
列車に乗ってみると、落ち着いた感じの車内が心地よい。席に座ると、快適な座りぐあいがする。発車して数分もしないうちに、ワゴンサービスがやってくる。コーヒーを注文する。紙コップにいれられたコーヒーは、こぼれないようにふたがされている。コーヒーは、キーコーヒーのものを使用している。
窓の外に広がる住宅街が流れ、列車はゆっくりと新宿駅に向かって進んでいく。
ロマンスカーのような落ち着いた列車は、車内で仕事をするだけではなく、ものごとを考えることにも向いている。今後の仕事を、どう進めたらいいか、部署の人の仕事を、どう進めさせるか。そういったこみいったことを考えるには、うってつけの空間だ。
列車はやがて新宿に着く。新宿には、ロマンスカー利用者専用のカフェがある。
車内で仕事をするための列車、あるいはものを考えるための列車として、ロマンスカーは最適である。
小田急沿線在住者で、比較的長距離の通勤をする人は、ときどきはロマンスカーに乗ってみるのもいいかもしれない。そこで新しい考えが生まれ、よい仕事ができるようになれば、座席指定のための料金もそんなに高いものではないと思われる。
著者プロフィール: 小林拓矢
1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学卒。フリーライター。大学在学時は鉄道研究会に在籍。鉄道、時事社会その他についてウェブや雑誌・ムックに執筆。単著『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。ニッポン鉄道旅行研究会『週末鉄道旅行』(宝島社新書)に共著者として参加。