米Appleが同社iOS向けに提供している音声アシスタント機能「Siri」のサードパーティへの開放を計画しているという。6月上旬に開催される同社の開発者会議「WWDC」において、SDKの提供も合わせた発表が行われるとのことで、アプリやサービスを開発する各社にとって新しいユーザーインタフェース獲得への道のりが開かれそうだ。Siriに関してはOS Xでのサポートのほか、Amazon.comが提供するスピーカー型音声制御装置「Amazon Echo」のApple版の開発が進んでいるという噂もあり、次世代インタフェースを巡る動きに注目が集まる。
同件はThe Vergeなどが報じている。もともとはThe Informationが関係者の話として報じていたもので、それによればApple内での長年にわたる議論の末、サードパーティがSiriのインタフェースを利用するアプリ(サービス)を制作できるよう、Siriの外部開放を決めたのだという。WWDCのタイミングではSDKの提供も発表されるとみられ、同イベントではSiriを利用した外部アプリとの連携デモのほか、個別セッションでSDKとAPIを使ったSiriの制御の話題が出ることになるだろう。OS XでのSiriサポートの話題も噂として出ており、サードパーティ開放と合わせて何か情報が出てくるかもしれない。
また、これに連動して「Amazon Echo」型のデバイスをAppleが開発中という話題も出ている。機能的にはEchoとほぼ同等で、音楽の演奏やニュースの読み上げ、タイマーのセットなどが可能だという。AppleではHomeKitを通じた家電制御のエコシステムを推進しているが、従来のiPhoneなどのiOSデバイスからだけでなく、このApple版EchoをハブとしてHomeKit家電の音声制御が可能になるとみられる。Googleは先日のGoogle I/Oで「Google Home」を発表したが、もしAppleが同種のデバイス投入を決定した場合、2社に続く動きとなる。すでにiPhoneを持つAppleが専用ハードウェアを提供する意図は不明だが、iOSをエコシステムを広く宣伝する狙いがあるのではないかと考えられる。
AppleによるSiri開放は非常に面白いテーマだが、一方でどこまでアプリやサービス開発者に受け入れられるかを考えなければいけない部分もある。現在、コンピュータによる自動応答や対話型インタフェースのユーザーへの提供は、MicrosoftやGoogle、Facebook、LINEなど、多くのプラットフォーム事業者がしのぎを削っている分野だ。主にIMやMessengerなどチャット型のインタフェースを使用しているのが特徴で、連携するサービスやプラットフォームを選ばず、モバイルアプリ依存のエコシステムから離れ始めている。その意味で、SiriはAppleのサービスに根ざした仕組みであり、それ以上の広がりが見えにくい。そのあたりに留意しつつ、WWDCでの発表に注目したい。