都内でも屈指の銭湯の数を誇る足立区。大まかにいえば、環七通り以南、西新井駅周辺と北千住駅周辺に特に集中している。大黒湯やタカラ湯など、メディアで取り上げられるような有名銭湯もいくつかあり、宮造り風の外観をした銭湯が多い。今回紹介したいのは、足立区関原の「竹の湯」。東武スカイツリーライン「西新井」駅より荒川に向かって20分ほど歩いた先、関原不動商店街の路地にある、コインランドリー併設のビル型銭湯だ。

「竹の湯」へは西新井駅から徒歩20分とアクセスは良くないが、ゆったりと過ごせる穴場的な存在だ

女将さんの挨拶もまた魅力

のれんをくぐると、左右に下足箱。板鍵を抜いて、正面にフロントがある。女将さんの挨拶が気持ちいい。右手奥側が若干広めのロビースペースになっていて、マッサージチェアやテレビ、雑誌、腰掛け、ドリンクケースなどがある。フロントを向いて、男湯は右、女湯は左に進む。

脱衣所は広々。ロッカーは背側1面のみで、ロッカー上にはテレビが置かれている。中央には丸テーブル。ほか、丸型脱衣カゴや扇風機、洗面台、TANAKA製のはかりなど。天井は高くないが、天井扇が吊り下がっている。平日開店直後、相客は4~5人ほどだった。

白濁した電気風呂でゆったり

男湯のイメージ(S=シャワー)

浴室に入ると、手前カラン、奥浴槽。さらに奥、ガラスの向こうには露店風呂エリアがある。ペンキ絵やタイル絵などは特にないが、ケロリン桶はある。ボディソープ、リンスインシャンプーも各カラン間に設置されている。脱衣所側にはデジタル時計が設置されている。

湯は全体的にぬるめで、42度くらいだろうか。浅風呂、深風呂、ジェットバス、薬湯など幅広くそろえている。「福島県沼尻温泉」とプレートが掲げられている薬湯は電気風呂となっている。白濁しており電気が流れている場所が見えないので、筆者のように電気風呂が苦手だと少し怖いかもしれない。

寝風呂の隣には、1m四方くらいの小さな湯船がある。なんとも不思議なサイズだが、子ども用なのかもしれない。露店風呂エリアは、左手に岩風呂、右手には噴水付きの池と腰掛けがある休憩スペースがある。庇(ひさし)はあるが、空を仰ぐことのできる完全露天で、開放感は抜群。サウナ(別料金)や水風呂もあり、ついつい長湯になってしまうこと請け合いだ。

都心から見れば決してアクセスはいいとは言えず、また、目立った観光スポットはないので立ち寄りにくい地域なのは間違いないが、この穴場のオアシス銭湯は、お風呂好きとして行って損はない。外観だけ見れば一見地味に見えるかもしれないが、あらためて足立区銭湯の底力を感じる一軒でもあった。

※記事中の情報は2016年5月時点のもの。イメージ図は筆者の調査に基づくもので正確なものではございません

筆者プロフィール: 高山 洋介(たかやま ようすけ)

1981年生まれ。三重県出身、東京都在住。同人サークル「ENGELERS」にて、主に都内の銭湯を紹介した『東京銭湯』シリーズを制作している。