スマートフォンは、携帯電話とコンピュータ両方の顔を持ちます。ですから、スペック表を見れば専門用語のオンパレード……これではおいそれと比較できません。このコーナーでは、そんなスマートフォン関連の用語をやさしく解説します。今回は「虹彩認証」についてです。

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虹彩(こうさい)は、眼球の前面にある膜であり、中心部分(瞳孔)を取り巻く形で円盤状に存在します。眼球内への入射光線量を調整する働きがあり、明るい場合には眩しくないよう小さくなり、必要以上の光を遮断します。カメラやプロジェクターの光量調整装置が同じ名前(英語名アイリス=虹彩)で呼ばれるのは、同様の機能を持つためです。

その虹彩は、1人1人でパターンが異なります。血縁関係にない人間はもちろんのこと、一卵性双生児でも異なり、同じ人間の左右の目ですら異なります。高い複雑性とランダム性があり、同じパターンと認識される可能性は10の78乗分の1といわれるほど低いものです。生後2年ほどで安定化し以降ほぼ変化しないとされているため、イメージセンサーおよび画像処理技術の進化に伴い、虹彩パターンを読み取り個人を識別する「虹彩認証」システムへの応用が進みました。

スマートフォンでは、富士通のARROWSシリーズで虹彩認証システムが導入されています。2015年夏秋モデル「NX F-04G」で初めて「Iris Passport」という名称で登場し、2015年冬春モデル「NX F-02H」でも採用されています。その認識精度・速度は高く、セキュリティ強度からしても今後の普及が期待されます。

ARROWSシリーズでは、前面上部のインカメラで虹彩を読み取ります。事前に両目の虹彩を登録しておき、両目または片目の虹彩を読み取ることで認証を行います。読み取るときには端末を見つめる必要があるため、機能の存在をほとんど意識せずに利用できる指紋認証と比較すると、若干の集中力が求められます。

端末から赤外線LEDが照射されるため、暗い場所でも利用できますが、直射日光が目や端末に入る環境下での認証は困難です。充血やものもらいなどの症状にはほぼ影響されず、メガネやコンタクトレンズを装着していても認証可能ですが、精度は多少低下します。ただし、サングラスやカラーコンタクトレンズは虹彩が隠れてしまうため、認証できません。

虹彩認証システムを搭載する「arrows NX F-02H」