――毎月のストレスチェックを始めたことで、どのような変化がありましたか?
小野氏: 活躍してほしい社員が急に辞めてしまうようなことが無くなりました。ストレスのポイントが高かった人に同意を得て、私のような担当者が面会しているのですが、「上司とうまくいっていない」「今の仕事の適正がない」など上司に相談しにくいことでも話を聞くことができます。面談結果は執行役員会に報告しますが、この結果をふまえて人事異動や職種変更が行われることもありました。こうして部署異動したことによって活躍している社員が十数人おります。
久保氏: 私は高ストレス者として人事に話を聞いてもらったことがあります。上司に言いづらいというか、言うまでも無いかな、と溜めていたことがあったのですが、面談後、上司から以前よりも声をかけてもらえるようになり、相談がしやすくなりました。仕事のやり方が変わったんです。異動したわけではないので、こうした効果は数字では見えにくいですが、職場改善には確実につながっていると思います。
――人事が高ストレス者に面談する場合、気をつけていたことはありますか?
小野氏: 上司ではない社内の人間として、フラットな気持ちできていただきたいと思っています。「保健室の先生」みたいな雰囲気で話すことを心がけています。その結果今では、ストレスチェックを受けなくても事前に相談に来てくれる社員が増えました。それから、時短制度などの「会社に存在するのに知られていない仕組み」をその人に合わせてアドバイスもしています。
――どのような人が面談対象者なのでしょうか?
小野氏: 「この点数以上になったら高ストレス者」という基準を設けているのですが、それだけでなく変動を見ることも重要です。先月と比べて大きく点数が上がった人にも、何かあったのではないかと話を聞けるような体制を整備しています。
――高ストレス者の基準設定が難しいという声もありますが、どのようにして決めたのでしょうか?
岸氏: 繰り返し行う中で高ストレス者の傾向がみえてくるようになり段階的に基準値を設定しました。厚生労働省では、上位10%を高ストレス者の目安として提示していますが、目安基準値をそのまま当てはめると会社によって対象者数が左右されてしまいます。ストレスチェックの前例がない中で実施する場合は、初年度は本当にストレス値の高い人だけをピックアップできるような基準値を設定した方がよいでしょう。
――とはいえ、毎月答えるのは大変ではありませんか?
久保氏: 正直に言うと、設問数も多いですし大変な面もあります。ですが、月に1度5分程度の回答で、結果をちゃんと見てもらっていますし、やる側も大変だろうな、と思いながら回答しています。また、ストレスチェックをすること自体が自己診断になります。ちょっと結果が悪かったら、とりあえず早く帰ろうとか、休日は好きなことをおもいっきりやろうとか、同僚と飲みに行こうとか、行動に移そうと思えますから。