AIはクリエイターになれるのか?
すでにAIが画家の特徴を模して"新作"を描いたというニュースもあるが、将来的にAIが学習を続けた結果、クリエイターになる可能性はあるのだろうか。音楽や小説、絵などで人間を感動させることは可能なのか。
これについては登壇者全員が「なれる」と回答。山川氏によると、特に音楽分野ではすでに実績があり、BGM程度であれば作れるようになっているという。
AIクリエイターの根拠となる技術は3つ。データの蓄積によりコンテンツを評価する技術と、コンテンツを構成するパーツを組み合わせる技術、そして何のパーツを組み合わせるかを決める技術である。
AIにとって難しいのは3番目。クリエイターの世界では「守破離」と呼ばれており、最初は模倣から入り、その後模倣から離れて違うものを取り入れ、最後に自在に組み合わせて自分の型を作るという流れだ。ただし、これもいずれはAIにもできるようになるという。
「クリエイションができること」と「クリエイターとして評価されること」を分けて考えるべきと主張するのは稲見氏だ。ワトソンクッキングで証明されたようにAIは何かをクリエイションすることは十分に可能。ただし、クリエイターとしてのAIが人間に評価されるためには、何らかの"物語"をプロデュースしなければならないという。背景となるストーリーが不在では、いかにすばらしいコンテンツを生み出せてもクリエイターとしての評価は受けにくい。これは納得のいく意見ではないだろうか。
AIが恋に落ちることはあるか
AIは人間に恋をするのか――。
SF小説のような疑問だが、興味深いテーマである。さすがに登壇者もこれには戸惑い気味だが、全員の意見が一致したのは「人間がAIに恋することは十分ありうる」ということだ。
「アニメキャラにだって恋する人はいるし、アメリカの出会い系サイトでは男性とやりとりしていたのはAIだったという話もある。だから人間がAIを好きになることはあるだろう」(稲見氏)
難しいのは、AIが恋をするのかということだ。
稲見氏は「あるAIを傍から見たときに恋しているように見える動作をさせることは可能かもしれない」としながらも、「そもそも本当に恋に落ちているかどうかなんて、人間だってわからないじゃないですか」と苦笑する。
たしかに「恋をしている状態」と「していない状態」の境界線を定義できないと、そもそもAIの恋愛を論じることは難しい。
一方で今井氏からは次のような興味深い意見も飛び出した。
「法人が法人に恋をしているように見えることもある。ということは、恋をしていると認定する境界線をおそらく僕たちは持っているはず」(今井氏)
果たしてAIと人間が恋愛をするような時代が来るのだろうか。興味の尽きないテーマではある。
サイボーグは実現するのか
最後に「サイボーグは実現するのか」というテーマでディスカッションが行われた。これについて稲見氏は哲学者アンディ・クラーク氏の著書を引用し、「すでに我々はサイボーグになっている」と説明する。
その理由の一つがスマートフォンだ。たとえばスマートフォンなしでは知らない土地から家に帰れないという人もいるだろう。それくらいスマートフォンは我々の日常に入り込んでおり、サイボーグのごとく情報システムが身体の一部になっているのだという。
さらに稲見氏は、脳に直接電流を流すことで肉体や頭脳の能力が向上するという実験結果を提示。「理由はまだわかっていないが、ある程度脳を通して入出力ができるようになった」と述べ、これもまた一つのサイボーグではないかと述べた。
最後に今後、AIの研究を志す人に向けて山川氏は「ネット上で知識を共有することで、人工知能の研究は加速している。あっという間に研究は進んでしまうので、始めるなら今すぐやるべき」と力説。AI研究者にエールを送った。