スマートフォンは、携帯電話とコンピュータ両方の顔を持ちます。ですから、スペック表を見れば専門用語のオンパレード……これではおいそれと比較できません。このコーナーでは、そんなスマートフォン関連の用語をやさしく解説します。今回は「VoLTE(HD+)」についてです。

***

2014年6月にサービスが開始された「VoLTE」は、4G/LTEのデータ通信網を利用した音声通話サービスです。それまでの回線交換網を利用する方式と比べ高音質/低遅延、3Gネットワークへの切り替え(CSフォールバック)が必要なく、キャリア側には電波の効率利用ができるというメリットがあります。4G/LTE対応かつVoLTEをサポートした端末が必要なうえ、現在のところ同一キャリア間の端末でしか通話できない(他キャリアは従来方式での通話)という制約はあるものの、対応端末は順調に増えています。

それから2年、NTTドコモは音質をさらに向上させた「VoLTE(HD+)」の提供を開始します。5月19日発売の「Galaxy S7 edge SC-02H」を皮切りに、6月中旬発売の「Xperia X Performance SO-04H」、6月上旬発売の「AQUOS ZETA SH-04H」が対応する予定です。従来のVoLTE同様、VoLTE(HD+)に対応する端末かつ同一キャリアの4G/LTE回線網でのみ利用可能です。

VoLTEとVoLTE(HD+)の違いは、音声データ符号化プログラム(音声コーデック)にあります。VoLTEでは、回線交換方式の音声通話サービスに利用されている「AMR-NB(Adaptive Multi-Rate Narrow Band)」より高音質な「AMR-WB(AMR Wide Band)」を採用していますが、VoLTE(HD+)ではそれを上回る「EVS(Enhanced Voice Service)」を利用します。

各音声コーデックが対応する声の周波数帯域は、AMR-NBが300Hz~3.4kHz、AMR-WBが50Hz~7kHz、EVSが50Hz~14.4kHzです。さらに、どれだけ細かく音を計測しているかを意味するサンプリング周波数も、AMR-NBが8kHz、AMR-WBが16kHzのところ、EVSは32kHzと伸長しています。結果的にデータ量は増えますが、より自然な肉声に近い音質で通話できるようになります。

なお、ドコモ回線を利用したMVNOのSIMが使えるかどうかは、2016年5月12日現在明らかにされていません。EVSは移動通信技術の標準化団体「3GPP」で承認されているため、他キャリアでの導入が見込まれるものの、現時点でサービス開始時期は未公表です。

ドコモのVoLTE(HD+)音質比較