トヨタ自動車は11日、2016年3月期決算を発表した。同社代表取締役社長の豊田章男氏が挨拶し、「私の経営に対する考え方」を述べるとして、今後の同社の戦略や展望を語った。市場の動向に一喜一憂することなく、「意思のある投資」を続けるとしている。

トヨタ自動車の決算説明会で登壇した同社代表取締役社長、豊田章男氏

豊田氏はまず決算の概要に触れ、2016年3月期決算は営業利益2兆8,539億円となったことを発表した(純利益は2兆3,126億円)。株主への期末配当は1株あたり110円。中間配当とあわせて、年間では210円となる。

あわせてトヨタの経営戦略も語った。台数や収益が「踊り場」であっても「上昇局面」であっても一喜一憂せずに、「もっといいクルマ」を作り続けるとしている。また、「意志ある投資」として、「もっといいクルマ」づくりを着実に進められる会社になること、自動車事業の枠に収まらない領域にも種をまいていくこと、リーマンショックのような事態が起きても推進できる財務基盤を作ることの3点を挙げた。

市場動向については、これまで為替の追い風などにより収益の拡大局面が続いたものの、今年に入り「潮目は変わった」として、厳しい局面に入ったとの認識を示した。ただし、この厳しい局面を「オポチュニティ」(機会)と捕らえ、改革に着手するという。その改革とは、トヨタが素早い意志決定をするには大きくなりすぎたとの反省から、小さなカンパニーに分けるという。

挨拶の最後で、豊田氏は今年1月に設立した「TRI」にも触れた。「TRI(Toyota Research Institute, Inc.)は、豊田氏が語る「意志ある投資」のひとつである自動車事業以外への投資の具体例で、人工知能を開発する新会社。2015年11月には、今後5年で10億ドルを同社に投資することを発表している。豊田氏は「TRI」について、トヨタ自動車の前身である「豊田自動織機の中に作られた自動車部のようなもの」だとした。

豊田自動織機は織機を開発・製造する繊維業界の企業だったが、自動車部の設立から大胆に異業種である自動車製造に転身し、現在の成功の基礎を作った。「創業期、自動織機から自動車へのパラダイムシフトに挑戦したトヨタが、もう一度大きくモデルチェンジするきっかけをTRIとともに創り出していく。既存の自動車事業の外で、どれだけ自由に挑戦できるか、CEOであるギル・プラット氏や、彼の下に集まったメンバーが勇気を持って取り組んでいけるようサポートしていきたい」と豊田氏は述べた。