大きな鉄道会社は、多くが株式を上場している。鉄道ファンの中には、鉄道会社の株を保有してみたいと思う人も多いだろう。株を持つということは、(わずかな株数であっても)鉄道会社を保有すること。鉄道ファンにとっては、鉄道会社を持ちたいというかなわなそうな夢が、ほんのちょっとだけかなうことでもある。
上場している鉄道会社は?
上場している鉄道会社は、本州のJR3社に加え、大都市部の私鉄が多い。そのなかでも、JR3社と東武・東急・小田急・京王・京成は日経平均株価の構成銘柄となっており、ニュースで必ず触れられる株価の動きに、密接に関わっている。また、富士急行のように鉄道も経営している、レジャー産業やバスの運行がメインの会社もある。
また、JR九州には上場の計画があり、近いうちに証券会社で株を買うことができることになりそうだ。株式会社であっても、中小の私鉄は上場していないところが多い。
どんな鉄道会社の株を買うべき?
鉄道株の魅力といえば、やはり充実した株主優待である。しかもその株主優待は、沿線に住んでいないと利用価値がないものがほとんどだ。自らがふだん使っている鉄道会社の株を買うことを、鉄道株の購入を考えているときにはまっ先に検討すべきである。
筆者は京王電鉄の沿線に暮らしているので、京王電鉄の株を例に見てみよう。まず、所有している株式の数によって、株主優待乗車証がもらえる。30,000株を超えると、それに加えて電車全線優待パスが、57,000株を超えると、電車とバスの全線優待パスを手に入れることができる。
また、京王百貨店や京王ストアでの割引券、その他ホテルなどの京王関連企業での各種優待券をもらうことができる。ユニークなものとしては、最近開業した京王高尾山温泉の割引券というのもある。
京王沿線での生活を満喫するにはぴったりの株主優待がそろっている一方、京王線沿線に暮らしていない人にはあまり縁のないものばかりだ。
京王電鉄ほど充実していないにせよ、ほかの私鉄各社も似たような優待制度となっている。鉄道の優待乗車証や、関連百貨店やスーパー、ホテルなどの割引券である。
なお、株主優待を手にするには、基準日に株主名簿に記載されていることが必要だ。京王電鉄の場合、3月31日と9月30日である。
株主優待が充実した鉄道株は、長期保有がベスト
鉄道株を個人で買っている人は鉄道ファンが多い。そういった鉄道ファンの個人株主は、めったなことでは株を売らない。鉄道会社を愛しているがゆえに株を買うのだ。
長期保有者を優遇する鉄道会社もある。京王電鉄は、3年以上継続して5,000株以上を保有している場合、電車全線優待乗車券の追加交付や、京王れーるランド入館券の引換券、京王百草園の入場券がそれぞれ2枚ずつ配られる。JR西日本では、鉄道優待割引券が追加発行される。こういった鉄道会社は、自社の株式を長期で保有してほしいという意志を示している。
こういった鉄道会社の株を長期保有する場合、値下がり、値上がりをいつも意識する必要はない。基本的には、いつ買ってもいい。ただし、値段が底をついたころ買う、というのがベストだ。
たとえば、現在は京王電鉄の株は900円台となっている。しかし、2011年には400円台だったこともあった。購入しようとしている鉄道会社の株は10年程度の長期的な株価の推移をチェックし、現在の株価が高いかどうかは調べておこう。
また長期投資の場合、株価の上昇・下落よりも、配当がどの程度あるかということのほうが重要だ。京王電鉄の年間予想配当は一株9円と予想されており、京王電鉄は1,000株単位で買うことができるので、年間9,000円となる。
長期間での株価の推移を見て、どれくらいになったら株を買うかを考える。そのためにあらかじめ証券会社に口座を開いておく(ネット証券でよい)。買ったら、日常的に株価の推移を追うようなことはしない。ましてあわてて売り買いを繰り返すこともしない。そして、配当や株主優待を心待ちにして、株主優待で沿線ライフを楽しむ。そして株主総会に行く。それが、鉄道ファンとして鉄道株を持つにあたって必要なことだ。
著者プロフィール: 小林拓矢
1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学卒。フリーライター。大学在学時は鉄道研究会に在籍。鉄道、時事社会その他についてウェブや雑誌・ムックに執筆。単著『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。ニッポン鉄道旅行研究会『週末鉄道旅行』(宝島社新書)に共著者として参加。
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