過日発表されたアップルのモバイルノートブック「MacBook」。新モデルでは、第6世代デュアルコアIntel Core Mプロセッサ(Skylake)が採用され、新色のローズゴールドが加わった。編集部では、そのローズゴールドの実機を入手することがようやくできたので、早速、ファーストインプレッションをお届けしよう。
今回発表されたMacBookでは、すべてのモデルで第6世代デュアルコアIntel Core Mプロセッサ(Skylake)が搭載されている。プロセッサとストレージ容量が異なる2タイプを用意しており、下位モデルは、プロセッサが1.1GHzデュアルコアIntel Core m3で、ストレージ容量が256GB。上位モデルは、プロセッサが1.2GHzデュアルコアIntel Core m5で、ストレージ容量が512GBとなっている。いずれもオプションで1.3GHzデュアルコアIntel Core m7が選択できるようになっている。CPUとしては、前モデルと比較して、最大18%の高速化が図られている模様だ。
アップルのWebサイトで公開されている仕様では、ストレージに関しては前モデルから変更無いように思われるが、実際のところ、読み込みで20%、書き込みで90%早くなっている。また、グラフィックスでは、Intel HD Graphics 5300からIntel HD Graphics 515に変更されたことで、25%の高速化を実現している。
スペック的には、全体的なパフォーマンスが向上したという印象だが、筆者のMacBookの主な用途(メールや原稿でテキスト打つのとWebブラウジング)を考えると、うん、まあ早くなったのかなという感じでもある。同じ使い方をするなら、これで不満、ということは無いだろう。
パフォーマンスという観点からは、それよりも重要だなと思ったことがある。バッテリーの持ち時間だ。まず、バッテリーの容量が前モデルの39.7Whから41.4Whへアップした。もともと消費電力が抑えられているMacBookだが、ここでバッテリー容量が増加したことで、駆動時間が従来モデルより1時間長くなるという機能改善を実現している。個人的にはこの1時間という長さは大きくて、マイナビニュースに掲載している平均的な記事なら1本、簡単なものなら2本は書ける。そういう特殊な用途でなくても、例えばブログ書いたりレポート書いたりという時に、アイディアあるけどバッテリー切れそうだから作業を中断、という事態が減るなら嬉しいのではなかろうか。
最大の強化ポイントは新色のローズゴールドの投入?
昨年3月にMacBookが登場した際、筆者は、「外で使う」ことを強く意識させると指摘したが、ローズゴールドの登場はそのコンセプトをさらに推し進めるものだ。このカラーは、iPhone 6s/6s PlusとiPhone SE、9.7インチiPad Pro、Apple Watch Sport/Editionで採用されているが、いずれも「外で使う」のを前提としたデバイスである。MacBookにローズゴールドモデルを投入したのは、これらに合わせて外で一緒に使ってねという意味が込められているはずだ。
アップルは近年、「入り口はiOSデバイスから」という施策を採っている。Apple Watchに至っては完全にiPhoneのコンパニオンデバイスであるが、Macに対しても「Continuity」と呼ばれている機能を使うことで、iOSデバイスとMacの間で簡単にファイルの移動が行えるようになった。「AirDrop」というワイヤレス環境を利用する機能を使うと、iPhoneで撮った写真をMacに移すなんてことなら一瞬で作業が終わる。iPhoneの人気を考えれば当然のことと言えるが、iOSとMac OSで異なるオペレーティングシステムが走っていたとしても、Apple IDとiCloudを利用して各種ファイルやメッセージ、メールなどにあらゆる状況からアクセスできるというサービスを提供することで、Macへ誘導するための導線をしっかり敷いているのだ。iOSデバイスでもMacでも、作成したファイルや撮った写真はiCloudを通じて、気がつくと同期していて、どちらでも同様にデータを扱えるというのは、生産性という点でメリットが大きい。
また、先行してこれらの製品のどれかをローズゴールドで持っていれば、同じ色で揃えたくなるというのが人情。この辺りも消費者の「欲しくなる」という気持ちを上手く汲み取っているように思える。今回のアップデートの最大のポイントは、実は全体のパフォーマンス向上云々より、新色のローズゴールドが追加されたというところにあるのではなかろうか。
iOSデバイスとの親和性について、もう一つ言及すると、今回、面白いアクセサリが追加された。「USB-C - Lightningケーブル」がそれだ。今まで、MacBookとiOSデバイスを接続するのには、「Lightning - USBケーブル」に「USB-C - USBアダプタ」を噛ます必要があったが、これなら一本でiOSデバイスのバックアップや充電が行える。また、MacBookに付属する「29W USB-C電源アダプタ」を利用すると、12.9インチiPad Proにおいては高速充電が可能となる(この点は興味深く、MacBookは外で使おう、その間、家では12.9インチiPad Proの充電をしておこうという使用スタイルの提案が窺える。12.9インチiPad Proでローズゴールドのモデルが存在しないのは「室内で使おうか」という含みを持たせていると言ったら牽強付会に過ぎるだろうか)。その一方、USB-C - USBというケーブルは追加されなかった。MacBook Airからの乗り換え需要は結構あると思うのだが、「移行アシスタント」を使うのならワイヤレスでやってくれということなのだろう。ワイヤード/ワイヤレスの採用基準もやはりiOSデバイスを軸にということがこれで分かる。
MacBookにはSIMが挿さらないから、インターネットを使うにはWi-FiなりiPhoneを利用したテザリングが必須となる。それに対し、用途が被ってると言われる12.9インチiPad Proは、Wi-Fi + Cellularモデルを購入すれば単体でモバイル通信が行える。12.9インチiPad Proの256GB/Wi-Fi + Cellularモデルの価格は146,800円(税別)で、MacBookの下位モデル(ストレージ容量が256GB)と2,000円しか違わないというのも悩ましいところだが(MacBookの下位モデルの価格は税別で148,800円)、既にiPhoneを持っているならMacBookを選ぶのがベター。というのもiPhoneにWi-Fi + CellularモデルのiPad Proという組み合わせは、同じiOSが走っていて、それこそやれることは丸被りだからだ。また、ローズゴールドのiPhoneを持っているのなら、同じカラーで揃えることも叶わなくなる。
ともあれ、入り口がiPhoneで、初めてパソコンを買うという人なら、最初の一台にはぴったりだ。12.9インチiPad Pro + Smart Keyboardのコンビより軽量だし、特に荷物が多くなりがちな女性には自信を持ってお勧めできる。