筆者は最近、9.7インチのiPad Proとともに、仕事環境、そして日々のコンピュータとの触れ合いを、iPad主体に移行しました。その体験を、みなさんとシェアしていきたいと思います。
筆者にとって、iPad Proへの移行は成功だった、と結論付けています。処理能力の高さ、ディスプレイの美しさ、デバイスの軽さとバッテリーライフの両立、セルラー通信に対応するモバイル性、そして、アプリの充実を体験することになりました。
また、仕事の手順をアプリで構成する「ワークフロー」を核とした考え方を採用することで、仕事の効率化とiPadへの移行を円滑に進める方法にもたどり着きました。
移行するまでに、様々な環境整備や、自分の中でのコンピュータ体験に対する先入観や慣れの排除など、葛藤も少なくなかったのですが、みなさんにも追体験可能な形で、ご紹介して行きますので、しばらくの間、お付き合いください。
もちろん、この原稿も、iPad Proを縦(ポートレートモード)に構えて、執筆していきます。
コンピュータ体験のiPadへの移行は、実行に移した2016年に思いついたことではありません。ふりかえれば、2010年にiPadが登場してから、コンピューティングの未来はタブレット主体になることに対して期待を寄せてきました。
同年に上梓した『タブレット革命』(アスキー・メディアワークス)では、登場したばかりのiPadについて解説し、紙からの移行手段の旗印としての要素、コミュニケーションに入り込むコンピュータとしての姿、教育での活用などの可能性について触れました。
当時まだ画面が小さく処理能力が低かったスマートフォンの画面を拡大し、「仕事の道具」として利用可能にする役割もありました。Appleは、初代iPadの画面サイズを9.7インチとしてリリースし、大小のバリエーションを増やしながらも、このサイズを堅持しています。iPhoneをはじめとする画面が5インチ半ばまで拡大しても、依然として「大きな画面」というキャラクターと、持ち運びやすさを両立する、絶妙なサイズを選択していたのです。
ただし、当時は主としての仕事環境をiPadに移行するだけの決断はできませんでした。同時に、筆者にとってのiPadは、「大きな可能性はあるが、まだ自分にとっては要件に満たないデバイス」という強い印象を植え付けることになりました。
思い返してみると、その印象は、アプリ、周辺機器、クラウドなどの環境整備が追いついていなかったことに起因しています。そして、2016年に筆者が移行したタイミングでは、環境が追いつき、筆者自身の考え方を変えるには充分だった、というわけです。