AppleがiOSとともに提供しているパーソナルアシスタント「Siri」を開発したメンバーらが、5月9日(米国時間)にも新サービス「Viv」を発表する計画だという。Siriよりも機能的に先進的なのが特徴で、例えばVivと会話的なやり取りを続けることでカスタムメイドの宅配ピザの注文が可能など、最近ブームとなっている「自動応答Bot」に近いインテリジェントな仕組みを備えている。
同件はWashington Postが報じている。同紙によれば、Vivは米カリフォルニア州サンノゼを拠点とするスタートアップ企業で、ステルスモードで4年間活動を続けている。中核メンバーのうちの2人は、かつて「Siri Inc.」の名称で活動していた企業で「Siri」の開発に携わっていたDag Kittlaus氏とAdam Cheyer氏だ。もともと米国防総省のDARPAが出資していたSRI International Artificial Intelligence Centerに在籍していたKittlaus氏が、Cheyer氏を誘う形でスタートした企業であり、音声認識とWebサービスを組み合わせた新しいUIとして「Siri」を生み出している。SiriはiOSアプリとしてもリリースされたが、最終的に2010年にAppleにより買収され、この機能をiOSに統合した状態で2011年10月にiPhone 4Sとともにリリースされた。なお、Siriとはノルウェー方面で女性のファーストネームとしては一般的な名前で、ノルウェー系米国人であるKittlaus氏によって名付けられたとされている。
Vivがどのような機能を持っているかは、Washington Postの記事冒頭で端的に説明されている。例えば「Get me a pizza from Pizz’a Chicago near my office. (オフィス近くのPizz’a Chicagoからピザを1枚注文してくれ)」とスマートフォンに話しかけると、Vivが「Would you like toppings with that? (トッピングが何がいいですか?)」と問いかけてくる。さらに周囲の複数のメンバーがスマートフォンに向かって好みのトッピングやサイズ変更のリクエストを言い続けると、これらのオーダーを集約してVivが注文を行い、40分後には注文通りのピザが配達されてくるといった形だ。最大の特徴は、Vivに話しかける人物らの言葉を理解し、必要な情報を適時収集する形で整理し、オーダーを自動的に完成させる点にある。つまり、本来であれば人手による電話応答や、機械が理解しやすいようにオーダー専用のWebフォームを用意して待機している必要があるものを、対話型インタフェースで自動的に処理することができる。
実際に、BUILD 2016の会場ではDomino Pizzaに対話型インタフェースでオーダーを出す様子が紹介され、後にきちんと注文のピザが配達されたことをTwitterへのツイートでアピールしている |
こうした仕組みは「AI (Artificial Intelligence)」などの名称でも呼ばれ、近年特に注目を集めており、シリコンバレーを含む従来型の大手企業らの注目を集めている。実際に、GoogleとFacebookがすでにViv買収のオファーを行っているという話まであり、各社とも自社サービスへの取り込みに躍起になっている(実際、Facebook CEOのMark Zuckerberg氏は投資会社を通じてVivに出資済み)。
機能的な面以外でのVivの特徴として、個々のサービス提供にあたって専用のアプリではなく、テキストや音声チャット用の汎用インタフェースを用いることが想定されている点にある。Washington Postの記事中でも指摘されているが、モバイルユーザーは現在5つのメジャーなアプリで作業時間の8割を過ごしているといい、コミュニケーション用のインタフェース(アプリ)は間口が狭くなる傾向が強くなっている。例えばFacebookはMessengerアプリを強化することで、こうしたフィールドで生き残る確率が高くなる。また、Siriを開発した創業メンバーの2人も、スマートフォンが対人インタフェースの中核となりつつあるのを見てVivのコンセプトをスタートさせたとのことで、今後5~10年先のモバイルとWebサービスのトレンドを牽引するのはVivのようなサービスとなる可能性が高いとみている。