既報のとおり、日本マイクロソフトは毎月10日を「Windows 10の日」とすることを発表した。その背景には、Windows 10の無償アップグレードを2016年7月29日に終了することを周知し、Windows 7/8.1ユーザーに移行を促す狙いがある。
Windows 10への移行促進については、法人市場の動きが活発化すれば早く進むのだが、それも容易ではない。Windows XPのサポート終了時をみても、ギリギリまで今のPCを使用し、いわば駆け込みで移行した企業が多かった。筆者は海外の市場動向を肌で感じることはできないが、日本マイクロソフト関係者の話を聞く限り、古いWindowsで構わないという日本市場の保守的な性格は、Microsoft本社には理解できないそうだ。
新たにコンテンツを刷新した「Windows 10アップグレードガイド」の内容からも、今回の方策が個人ユーザーを対象にしていることがうかがえる。日本マイクロソフトがWindows 10への移行に注力する理由は数多くあれど、「One Windows」と呼ばれるユニバーサルWindowsプラットフォーム(UWP)の存在は大きい。
UWPは上図のように、異なるデバイスに同じアプリケーションや開発環境を提供する基盤だ。One Windowsの実現に至るには、UWPアプリケーションやユニバーサルWindowsドライバーの拡充、さらに大元であるWindows 10の普及が欠かせない。そこで、日本市場においてキーとなるのがWindows 10 Mobileデバイスだ。
現在、国内でWindows 10 Mobileデバイスを発売もしくは開発している企業は11社におよんでいるが、日本マイクロソフトはこのエコシステムを広げるため、自社のスマートフォン「Lumia」の国内投入に踏み切っていない状態だ。
ここで、Microsoftが発表した2016年度第3四半期の業績に目を向けたい。Surfaceシリーズの売り上げは61%増と好調ながらも、Lumiaを含むスマートフォンの売り上げは46%減という数字が確認できる。Nokiaのデバイス事業を買収して手に入れたLumiaが芳しくないのだ。
WindowsやSurface、Xboxなどが含まれるMore Personal Computingセグメントは、94億6,000万ドル(前年同期比1%増)と悪い数字ではない。そこから読み取れるのは、米国でもWindows 10 Mobileデバイスが厳しい局面に立たされているという現状だ。
だが、これを逆転する方策がある。Surfaceブランドを冠にした「Surface Phone」を実際にリリースすることだ。Surface Phoneの噂について、Microsoft広報が認めることはなかったものの、Windows 10 MobileデバイスのフラッグシップモデルがMicrosoftから出れば多くのユーザーを満足させるだろう。
PCとスマートフォンの連携基盤が生まれないとOne Windowsの実現は難しい。だからこそMicrosoft自身がデバイスを投入するタイミングに注目が集まるのだ。
阿久津良和(Cactus)