ひとりで行動することを愛しすぎているライター・朝井麻由美さんの書籍『「ぼっち」の歩き方 魅惑のデートスポット編』。この書籍では、ボウリング、バーベキュー、花火大会など数々の「普通、ひとりでは行かないような場所」にひとりで挑む様子がレポートされている。そんな朝井さんに、「ぼっち(ひとりぼっち)」のいいところを教えてもらった。

『「ぼっち」の歩き方 魅惑のデートスポット編』著者の朝井麻由美さん(セルフタイマーと三脚を使ってひとりで撮ってもらった)

――どうしてそんなに「ぼっち」(ひとり行動)が好きなんですか?

人とのコミュニケーションが苦手だからです。気を遣い合ったり、言外の意図をくみ取ったり。

例えば、焼き肉を食べたくなって誰かを誘った場合、その誘った相手がいくら美味しそうに肉を食べているからって、本当に自分と同じくらい心の底から焼肉を楽しんでいるかどうかなんてわからないわけです。あくまで、他人だから。

それに、食べながら何か会話しなきゃならない、と気にしてしまうこともあります。いくら自分がカルビ大好きだからって、誰かと一緒にいたらカルビばかり注文するわけにもいきません。気が進まないけど、適度にハラミなどを頼んだり、最初はタンを頼んでみたり。つまり、人とどこかへ行って同じ時間を過ごすのは、何かと雑音が多いです。

人と会話すること自体が好きで、それを楽しめる人ならばいいのですが、私にとってはマイナス面のほうが大きくて、コスパが悪いんです。

そもそも、人間があまり好きじゃないのかもしれません……。

――ぼっちの魅力を教えてください。

時間とお金を自分のためだけに使えることです。無駄なく、合理的に自分の欲求を満たせます。

――なるほど、ぼっちはコスパがいいんですか?

人数が多ければ多いほど、ひとりあたりの金額が下がるものもあるので、モノによりますが、焼肉やバーベキューなど、みんなでやると食べたくもない食べ物を食べざるを得ない、みたいなものに関しては、コスパがいいと言えます。

ちなみに、私の場合、ひとり焼肉だと一回につき2,000円程度、みんなで行く焼肉だと一回につき6,000円程度使います。人に合わせて何杯もお酒を飲み、人に合わせて特に食べたくもないメニューを頼み、とやっているので、無駄が多いのです。

『「ぼっち」の歩き方 魅惑のデートスポット編』取材で使用したという三脚。掲載されている写真はすべてセルフタイマーや三脚で撮影され、著者ひとりで取材に行っているそうだ

――本の中で朝井さんは「私はぼっちが胸を張って生きる道を考えたいのだ」と熱弁されています。ぼっちが自分らしく生きていくためには何が必要だと思いますか?

人目が気になるから一人で行動しづらい、と私は昔思っていました。けれど、よくよく考えてみると、なぜ人目が気になるかというと、ひとり=みじめ、というイメージが自分の中にあったからだということに気づきました。「ぼっちの肩身が狭い」と思っていたのは、ほかでもない自分がそう思い込んでいた部分が大きかったわけです。

ぼっち=不正解で、集団=正解、では決してありません。どうしても、集団行動のほうがマジョリティだからって、ぼっちでいることは間違っているわけではありません。これに気づいてからは、ずいぶん生きやすくなったように思います。

『「ぼっち」の歩き方 魅惑のデートスポット編』のなかみ(一部)

『「ぼっち」の歩き方 魅惑のデートスポット編』(朝井麻由美 著/PHP研究所/1,200円+税)

ひとりが好きだ。人の多い飲み会へ行くと、ぐったりと疲れる。美容院やタクシーでは、ひと言も話しかけられたくない。"みんなでワイワイ"が、うまくできない。どうしてみんなで文化祭の準備をしなければならないのだろう。みんなで同じ大仏を見て、同じ時間に同じお風呂に入る修学旅行の何が楽しいのだろう。

この本は、ひとりで行動することを愛しすぎている人間が、「普通、ひとりで行かないような場所でもどれだけ楽しめるか」を検証していくのがテーマである。(「はじめに」より)


ひとり好きの、ひとり好きによる、ひとり好きのための「ぼっち」指南書。