マイナス金利の影響が3月に入って顕著になってきました。預貯金金利が低下する一方、住宅ローン金利も一段と低下し、住宅ローンの借り換えが急増しています。必ずしも借り換えでトクするケースばかりではありませんが、どういう場合に借り換えをすべきか、解説します。
残り1,000万円、10年、金利差1%が借り換えのセオリー
住宅ローン金利が一段と低くなったとはいえ、ここ最近は、変動金利で1%を切るなど、もともと住宅ローン金利は近年まれにみる低金利で推移しています。この1~2年の間に、住宅ローンを借りたケースでは、借り換えによるメリットは出にくいと言えます。
本来、借り換えでメリットがあるのは、
1)住宅ローンの残高が1,000万円以上ある
2)残りの返済期間が10年以上である
3)借りたときの金利との差が1%以上ある
の3つがセオリーと言われています。特に金利差が1%以上ないと、借換時に発生する登記費用や融資手数料などの諸費用で、トクする金額が減ってしまうからです。ただ、最近は、0.5%程度の金利差であっても、毎月の返済額が減らせること、結果的に総返済額が100万円単位で減らせるなら、借り換えを検討してみてもいいと考えられています。
金利差0.5%でも総返済額は100万円減らせる
仮に、現在2,000万円残高があり、残り20年、30年の返済期間がある場合、金利によってどの程度、毎月返済額、総返済額が減らせるのか、試算してみましょう(全期間固定金利、元利均等返済)。
2016年3月時点の住宅ローン金利のうち、全期間固定の場合、メガバンクの水準では金利1.5%程度です。このタイプに借り換えをする場合、今、借りている住宅ローン金利が1%高い、0.5%高い場合の毎月返済額と総返済額を試算すると、金利差0.5%(つまり2.0%程度で現在借りている場合)でも、残り20年での総返済額は100万円以上減らせることになります。借り換え費用を差し引いても、50万円以上はオトクになる、ということです。もし、金利差が1.0%あれば200万円以上オトクになるのですから、借り換えしない手はありません。
金利タイプの変更はどう考える?
借り換えの際に、「変動金利→変動金利」で借り換えるよりも、「固定金利→変動金利」で借り換えた方が、そのメリットは大きくなります。
メガバンクの変動金利は0.6%程度。ネット銀行では0.6%を切っています。一方、10年固定など、固定金利選択型の場合は、優遇金利を適用しても0.8%程度と少し変動金利より高めです。さらに、金利が返済終了まで変わらない全期間固定金利のタイプでは、1.5%程度です。この傾向は、どんな場合でも変わりませんので、変動金利で借りているものを固定金利に借り換えると、かえって返済額が増えてしまうケースもあるでしょう。
ただし、住宅ローンを借りる際の鉄則は、金利が低いときや今後金利上昇が見込まれるときは「固定金利」を選ぶということです。通常なら、借り換えで固定金利を選びたいところですが、現在の低金利メリットを享受するなら変動金利を選択してもいいでしょう。まだ変動金利は、今回のマイナス金利の影響が反映されていないので、今後一段下がる可能性がありますので、借り換えのタイミングをよく見極めましょう。
逆に、変動金利から固定金利に借り換えるという考え方もあります。毎月返済額は増える可能性が高いですが、現在の固定金利は最低水準と考えれば、将来の金利上昇の心配をしなくてすみ、返済額を固定することができます。これは家計の安定にもつながりますので、試算をしてみて、毎月返済額の負担が重くなければ、検討してみてもいいでしょう。
いずれのケースでも、一度試算だけはして、住宅ローンをほったらかしにしておかないことが、今やっておくべき最大の家計防衛と言えるでしょう。
伊藤加奈子
マネーエディター&ライター。法政大学卒。1987年リクルート(現リクルートホールディングス)入社。不動産・住宅系雑誌の編集を経て、マネー誌『あるじゃん』副編集長、『あるじゃんMOOK』編集長を歴任。2003年独立後、ライフスタイル誌の創刊、マネー誌の編集アドバイザーとして活動。2013年沖縄移住を機にWEBメディアを中心にマネー記事の執筆活動をメインに行う。2級FP技能士。