もちろん、スマートフォン講座では、もっとライトな使い方提案も行っている。この4月に行われた講座は、写真の撮り方、楽しみ方を重点的に参加者へ説明した。説明といっても、堅苦しく会議室の中でつまらないブツ撮りをするのではなく、屋外に出て美しい景色を楽しみながら撮るという「普段の生活で活用できる、簡単な楽しみ方」を体感してもらおうというものだ。
関西に在住するauスマートサポート会員とその同伴者15名と、au長期利用者とその同伴者17名が参加したこのイベントは、京都の平安神宮付近で行われた。au長期利用者に関しては、まだスマートフォンを購入しておらず、「スマートフォンには興味があるけど……」という"悩み中"な人が総応募数200名の中から招かれた。
"スマホ前"な人たちもいるため、そもそも「スマートフォンとは?」「スワイプ、タップ、フリックとは?」「アプリとは?」「LINEとは?」「YouTubeとは?」といった項目から説明し、「スマートフォンはよくわからない」と敬遠されぬように、一から親身にわかりやすく説明することで、「スマートフォンって楽しいんだ」と思ってもらえるようなプログラムで進行した。
メインイベントである平安神宮散策の撮影にはプロフォトグラファーである中原 一雄さんを招き、「初心者でも簡単に、楽しく、綺麗な写真が撮れるコツ」を伝授した。イベントで特に盛り上がったのが、「スマートフォンを逆さに持ってください」というワンポイントアドバイスが行われたシーンだ。中原さんによると、逆さに持ってカメラのレンズを下にして仰角に対象物を撮影することで、迫力ある写真が撮れるとのことで、筆者などの報道陣を含め「おぉ!」という声が上がっていた。
密着サポートから得るものは「声」
auスマートサポートは単なるサポートの枠を越えたサービスであり、顧客満足度は非常に高い。京都のイベント後に行われたアンケートでも楽しいというコメントが散見されたほか、イベントを通して写真の楽しさ、ひいてはスマートフォンの楽しさから「いろいろなサービスをもっと使いたい」「(スマートフォンを使って)ブログを始めてみたい」という前向きな姿勢が多く見られた。
同サービスを企画するKDDI カスタマーサービス本部 カスタマーサービス企画部長の木村 奈津子氏は、2年以上にわたって開催してきたイベントから得た経験として「スマートフォンに慣れてきたあとに、イベントに参加される方が増えてきた」というポイントを挙げる。スマートフォンの普及率が過半数となり、諸外国に比べて低い数字であるものの、スマートサポートを利用するメイン年齢層の50代以上であっても、利用歴が数年になるユーザーもそれなりの規模になってきた。
木村氏が「聞きたいことをリスト化して(イベントに)持ってきている」と話すように、高齢者の先進ユーザーの場合、スマートフォンに慣れてきたとしても、「信頼のおける、携帯キャリアの人」と直接対話できる機会があるならば、誰だかわからない不特定多数が利用するQ&Aサイトなどで尋ねるよりもよく理解できるから、といった理由でイベントに参加するようだ。
今回のイベントにはフィーチャーフォン利用者も参加したが、スマートサポートのスマートフォン講座としては初めての試み。
「フィーチャーフォンユーザーの方はあまりメールも見られませんし、キャリアショップへの来店も、修理、機種変更などで1、2年に1回程度しかなく、接点を持てずにスマートフォンの魅力を伝えられませんでした。ただ、今回『イベントにお呼びしてスマートフォンを体験してもらおう』としてメールを送ってみたら、想像以上にレスポンスが良かったです。フィーチャーフォンの方でもスマートフォンに興味があるんだなと手応えがありましたし、こうしたお客さまのニーズと私達のやっていることをどのようにつないでいくかは、今後も考えていくべきことだと思います」(木村氏)
イベント中、なぜかイベント外の修学旅行生の写真撮影に応じる木村氏。auおせっかい部としても活動しているように、"おせっかい"をせずにはいられない性格のようだ |
一方で、こうしたイベントの運営は携帯キャリアとして「どのような価値を提供できるか」が悩みどころだという。キャリアに限らず、スマートフォン講座は町中でも多く開催されており「せっかくキャリアがやるのであれば、"日常"まで踏み込んだ楽しさを提供する必要がある」(木村氏)として、今回の平安神宮のように、これまでもさまざまな観光スポットでイベントを運営してきた。
「例えば、フィーチャーフォンユーザーだけをお呼びするイベントだと『機種変更してくださいね』といやらしくなってしまいますし、そうした部分も考えどころです。このイベントでは、auサービスといい接点を作りつつ、どう長く、楽しくスマートフォンを使っていただけるかを考え、さまざまな体験を提供していきたいと思っています。
こうしたイベントは費用対効果がわかりづらく、キャリアとしてはなかなかやりづらいですし、各社ともなかなか追従されない。でも、今日も来られた方がおっしゃっていたんですが、ユーザーは『アップデート通知が来たけど、どう対処すれば良いのかわからない』といった、私たちからすれば本当にちょっとしたことでも漠然とした不安を抱えられていらっしゃいます。
そうした声を、本部にいる社員が直接うかがうことで、お客さまの声を社内のさまざまな部署に迅速にフィードバックできる。若い社員たちにも『お客様にお聞きしたいことはたずね、お客様のつぶやきにはさまざまなヒントがあるから、すぐにメモしなさい』と言っています。
あまり難しいことをやらずにスマートフォンの魅力を伝え、お客様の声を積極的に拾っていく。こうした取り組みは今後もどんどん、楽しく続けていきたいですね」(木村氏)