iPhoneやiPad、あるいはMacBookといったApple製品は、そのデザインの美しさや使い勝手のよさが人気だが、同時にある種の都市伝説のように「壊れると修理が難しい」とまことしやかに言われている。果たして、本当のところはどうなのだろうか?
修理の基本はAppleに持ち込み
Apple製品の「修理が難しい」といわれる理由のひとつは、初期のMacではユーザーが分解できないようにネジなどに特殊な規格(トルクスネジなど)を使っていたり、専用の工具が必要なケースがあったこと、分解して自分でメモリなどを増設したとき、それが原因で故障すると、保証期間が切れてしまうのが、「分解すると即座に保証が切れる」と誤解されたことなどが原因だった(ただし、iPhoneなど実際に分解が保証切れになるケースもある)。
現在はというと、Apple製品の修理は、基本的に「Apple本体」、または全国にある「正規サービスプロバイダー」にて行うことになっている。Apple本体には直営店であり、全国8箇所にある「Apple Store」の対面型サポート「ジニアスバー」も含まれるが、基本的にはAppleにマシンを送って修理してもらうことになる(「ピックアップ&デリバリー」サービス)。また、iPhoneの場合はパーツ交換ではなく、本体丸ごと交換になるケースが多い。
修理代金は、購入から1年間(一部、修理品の場合は90日間)が無償修理期間となるが、無償になるのは自然故障の場合のみ。落下や水没など壊れた場合は有償修理となる。保証期間を延長するには、アップルの延長保証制度「AppleCare Protection Plan」を購入する。本体購入から30日以内に購入すると有効になり、2年間(iOS機器の場合は1年間)保証期間が延長される(合計でMacが3年、iOS機器が2年)。
AppleCareはiPhone用で12,800円(6sおよび6s Plusは14,800円)と、本体価格からすると価格がやや高めに感じるが、iPhoneやiPadのセルラーモデルの場合、割賦販売の代金に上乗せする形で毎月に分割した支払いも可能だ。また、本来は落下などによるコネクターの損傷や水没の場合、最も高価な「保証対象外修理」になるところ、2年間で落下・水没でも2回まで安価に修理できるようになる。さらに、基本的には引き取り修理になるのだが、希望ユーザーには有料(3,300円)で即時交換をお願いすることもできる。この交換料金がAppleCare+に入っていると無料になるため、きちんとバックアップさえとってあれば、修理に持ち込んで一瞬で直して再度活動できる。
キャリアが用意するサポートプランのほうが有利なケースもあるが、SIMフリー端末の場合はぜひ加入しておきたい。
古いマシンはどうなる?
ここまでは現行製品の修理についてだが、それでは型落ちになってしまった機種についてはどうだろうか。Appleは、製造が終了した製品の部品については、製造終了から5年間保持している。この期間中であれば、正規の修理ルートでの修理が可能だ。つまり、2016年であれば「2011年内に製造が終了した機種から最新モデルまで」が修理可能なのだ。販売が終了していても、すべての修理ができないわけではない。これ自体はApple以外の他社でも基本的には変わらない。ちなみに、これに照らし合わせるとiPhoneならiPhone 4以降、iPadは全機種がまだ修理可能ということになる。
しかし、製造終了から5年を経過してしまうと、基本的に正規の修理は不可能となる。メモリやハードディスクといった汎用品であれば自力で交換も可能だが、マザーボードや筐体の一部といった専用品については在庫がなくなった時点でアウトだ。正規サービスプロバイダーの場合、修理箇所を確認したあとで部品を請求して修理するという手順なので、部品の在庫が残っているという希望もほとんど持てない。インターネットでは部品単位で販売しているケースも見られるが、これを持ち込んでも修理はしてもらえない。こういった部品が役立つのは、あくまで自己責任で、自分で修理したいケースだけだと覚悟しよう。
町のiPhone修理ショップってどうなの?
iPhoneの修理、特に画面割れについては、正規料金よりも安価に修理してくれる修理ショップがある。最新機種はもちろん、部品さえあれば製造終了した古いモデルも修理してくれるところもある。出費を抑えたいというユーザーに人気だが、実は問題を抱えている。ひとつは安全性の問題、もうひとつは法的な問題だ。
まず、安全性について。こうした修理業者はAppleの正規代理店ではないケースがほとんどだが、そのため修理部品には純正部品ではなく、互換性のある部品を使っている。このため、例えば液晶パネルの色みが若干変わるなどの差異が発生する場合がある。この程度であれば慣れの問題だが、バッテリーなどはきちんとした検査を受けていないものが使われることがあり、最悪、発火などの危険な事態に繋がらないとも限らない。
次に法的問題について。総務省はスマートフォンの修理業者に対して、電波法に基づく特別特定無線装備の登録修理業者制度をスタートした。これにより、未登録の業者が作業した端末を使うと。電波法違反に問われるおそれがある。また、万が一修理した部品が原因で故障したり、発火してほかに被害が広まった時の保障がまったく受けられなくなる。こうした事態が頻繁に起こることは少ないだろうが、リスクとして把握しておいたほうがいいのは間違いない。
最後に、iPhoneを正規に修理する場合、本体丸ごと交換になるケースが多く、その場合は現在のiPhoneに入っているデータはすべてユーザー側がバックアップしておく必要がある。アップルはデータをそのまま消去し、新しい端末を機械的に送ってくるだけなので、バックアップからの復旧も含めてすべてユーザーがやることになる。iCloudを使っていれば、最低限のデータはクラウドにバックアップできるので、これを使うのが得策だ。