売上高トップ10から日本勢が消える可能性
Gartnerは4月5日(米国時間)に、2015年の世界半導体市場および半導体売上高トップ10の最終確定値を公表した。それによると、2015年の世界半導体市場の売上高総額は3348億ドル(約36兆8000億円。1ドル110円換算)で前年比2.3%の減少となった。IHSの調査結果の2.0%と類似した値であるが、大手25社の売上高合計は前年比0.5%減と、市場全体よりも落ち込みが少なかった。
Gartnerは世界半導体企業売上高の最終確定値を上位10社に限って公表している(表2)。IHSが公表したランキングと比べると、6位までは同じだが、IHS版では7位にランクされたNXPが、Gartner版にはふくまれていない。2015年12月にNXPがFreescaleの買収を完了したが、IHSは、NXPの売り上げにFreescaleの売り上げを加えているのに対して、Gartnerは2社の売り上げを分離しているためであろう。また、InfineonとSTMicroelectronicsの売り上げは僅差であるため、IHS版とGartner版では順位が逆転している。
シェアトップであるIntelの2015年の成長率はマイナス1.2%となっており、IHS版のプラス2.9%と異なるが。これもキャッシュカウである買収した企業の売り上げをいつの時点から集計するかの違いによるものと思われる。トップ10の中で、2桁成長したのはInfineonのみで、一方、2桁のマイナス成長は、Qualcomm、Micron、東芝の3社となった。東芝は、NAND型フラッシュメモリの価格低下や不正会計問題の余波で、売り上げを落としており、東芝より下位グループの大型合併次第では、日本勢がトップ10から消える事態も生じる可能性が出てきた。
表2 世界半導体企業売上高ランキング・トップ10(単位:100万ドル)。表の左から2014年順位、2015年順位、企業名、2014年売上高、2015年売上高、2015年の対前年比成長率(%)、2015年の市場独占率(%) (出所:Gartenr 2016年4月) |
日本勢全体の市場シェアは8%に低下
IC Insightsは4月5日(米国時間)、世界半導体市場における国別シェアの2015年確定版を公表した。この調査は、伝統的に半導体企業の本社が所在する国別に集計している。そのため、例えばIntelの海外工場(中国やイスラエル、アイルランド)で生産された半導体製品の売り上げは、本社のある米国の売り上げとして計上されている。同様に、Samsungの米国子会社(テキサス州オ―スチン)で生産された製品の売り上げは韓国勢の売り上げとして計上されている。この集計には、IDMとファブレスの両方を含むが、ファウンドリの売り上げは2重にカウントすることを避けるため含んでいない。
図1に示すように、2015年の米国の市場シェアは54%(IDMが51%、ファブレスが62%)で、2014年の55%よりわずかに低下したものの、安定して過半を占め続けている。2位は韓国で20%(IDMが28%、ファブレスが1%未満)。3位は日本で8%(IDMが11%でファブレスが1%未満)。以下、台湾7%、欧州(EU)6%、中国3%と続く。かつて5割を超えていた日本勢のシェアは、4半世紀に渡り、ほぼ単調に低下し続け歯止めがまったくかかっていない。また台湾は、欧州を2013年に抜いて以降シェア4位を維持してきたが、NXPが2015年にFreescalを買収したため、2016年は欧州が台湾を抜く可能性が高いとIC Insightsは見ている。
この図で注目されるのは米国ではIDMとファブレスがバランスよく存在するのに対して、日本と韓国では、ファブレスがまともに育っていないという点。韓国は、SamsungやSK Hynixに代表されるIDMのシェアが高く、全体のシェアも上昇しており、かつての日本のようなIDM王国の感がある。これに対して、日本はIDMのシェアが低下する一方で、ファブレスはまったく成長しておらず、全体のシェアがゼロを目指すかのように単調に減るという状況にある。
また、台湾はファウンドリの国と思われがちだが、ファブレスがしっかりと育っており、ファブレス+ファウンドリの国といえる。これを裏付けるのが台湾IDMシェア(2%)であり、ファブレス+ファウンドリという水平分業体制が進んでいることがうかがえる。
さらに中国を見てみると、IDMのシェアはほとんどないものの、2010年には5%であったファブレスのシェアが10%と2桁に達しており、日本がうかうかしている間に、半導体設計の強国へと急成長している姿がうかがえる。中国は、政府主導で半導体の内製化に莫大な投資をしているので、メモリを中心とした半導体の製造が軌道に乗ってIDMの売り上げが数字となって表れるのも、それほど時間がかからない可能性があるだろう。