NTTデータ、埼玉県保健医療部、埼玉県国民健康保険団体連合会はこのほど、埼玉県が平成26年度から開始した、糖尿病性腎症重症化予防対策の実施状況を明らかにした。

糖尿病は初期段階では自覚症状が現れないことも多く、適切な治療や生活習慣の改善を行わないと重症化したり、合併症を引き起こしたりする場合もあるという。合併症の中でも、腎臓の機能が低下する「糖尿病性腎症」は、末期には人工透析治療に移行してしまう可能性が高くなる。

厚生労働省の推計によると、埼玉県内の糖尿病患者は約31万8,000人(厚生労働省、平成25年国民生活基礎調査)。平成25年の埼玉県における人工透析患者数は1万6,753人、うち糖尿病性腎症が原因で人工透析となった患者数は6,742人。人工透析患者のうち、糖尿病性腎症者の割合は40.2%となっている(日本透析医学会「わが国の慢性透析療法の現況」)。

合併症を発症し、人工透析に移行すると、週2~3回の通院が必要となり、医療費も年間1人当たり約500万円と、移行前の10倍に高騰するとのこと。

同県では平成26年度から、国民健康保険被保険者を対象として、「特定健康診査」やレセプト(診療報酬明細書)のデータを活用。糖尿病が重症化するリスクの高いハイリスク者が、人工透析に移行するのを防止する取り組みを行っている。

この取り組みは、市町村が事業主体となり、ハイリスク者のうち、医療機関未受診の人や治療中断している人への受診勧奨。また、糖尿病で通院中の人への食事・運動などの保健指導を行う。平成26年度に19市町で事業を開始したが、平成27年度には11市町が加わり30市町が実施した。

「受診勧奨」の対象となったのは、医療機関未受診の人および治療を中断している5,622人。受診勧奨通知、保健師などの専門職による電話や訪問による再度の勧奨を行った。受診勧奨2カ月後までのレセプトデータから受診状況を確認したところ、勧奨前の新規受診率10.0%に対し、勧奨後は18.3%と約1.8倍に増加した。

「保健指導」の対象となったのは、糖尿病性腎症の病期2~4期の1,195人。かかりつけ医と連携し、6カ月間、保健師などの専門職が食事や運動などの生活習慣の改善を支援した。6カ月間の指導修了後、HbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)は、対象者の平均値が開始前7.1%であったところ、6.8%へ0.3ポイント改善した(※)。

HbA1cの数値は、日本糖尿病学会では、合併症予防のために7.0%未満に抑えることを目標としている。今回の保健指導により、この目標をクリアできた。

埼玉県は「糖尿病はとても恐ろしい病気ですが、重症化を予防できることも分かっています。糖尿病の不安がある方は放置せずに、一歩踏み出して、ご自身の健康を守りましょう」とコメント。平成28年度は40市町が取組を行う予定だという。

※5.5%未満なら正常、血糖正常化を目指す際の目標は6.0%未満で、合併症予防のための目標は7.0%未満