企業実証特例制度を活用したセグウェイ公道走行実証実験

二子玉川地区交通環境浄化推進協議会、東京急行株式会社とセグウェイジャパン株式会社は、東京都世田谷区二子玉川周辺地区において、交通マナー啓蒙を目的とした「セグウェイツアーin二子玉川」を実施すると発表した。

セグウェイツアーのイメージ(プレス向けの撮影会より)。横断歩道の走行や保安要員のセグウェイ利用も、茨城県つくば市で先行している実証実験中に緩和された

ツアーはレクチャーに加えて、公道(歩道部分)、区立二子玉川公園、多摩川河川敷を含む往復5.8kmのコースを走行する(実施は週三回、一日二回、一回当たり最大8名を予定)。予約や詳しい情報提供は専用サイトで行う。

まずは世田谷区民や関係者を対象とした試験運用で安全性を実証し、今年(2016年)の夏を目途に有料で一般開放するが、料金は現時点で未定となっている。

左から、セグウェイジャパンの大塚寛社長、二子玉川地区交通環境浄化推進協議会の志賀考会長、経済産業省 製造産業局長の粕谷敏秀氏、世田谷区の保坂展人区長、東急電鉄の野本弘文社長

報道陣向けの説明会では、上記の3団体、経産省 製造産業局長、世田谷区長が簡単にあいさつを述べたのち、経産省の橋本氏が今回のプロジェクトを可能とした産業競争力強化法による企業実証特例制度について説明した。

企業実証特例制度は、規制によって企業のビジネスアイディアを実現できない場合、企業の所轄省庁が窓口となって規制所轄省庁と協議することで、速やかに実現するための規制改革制度だ。規制の範囲が明確でない「グレーゾーン解消制度」と合わせて、すでに82件の申請があったという。

企業実証特例制度を説明する、経済産業省 経済産業政策局 産業構造課長の橋本真吾氏

制度の概略。国民生活を豊かにするビジネスアイディアを、担当省庁が関係省庁と協議して、規制改革へと持って行く

今回のプロジェクト概要は、東急電鉄の東浦氏が説明。二子玉川エリアは、住みたい街(世田谷区)や商業施設という魅力を持っていたが、二子玉川ライズが昨年(2015年)竣工し、「働くまち」という魅力が加わったとした。

プロジェクトの概要を説明する、東京急行電鉄 都市創造本部 戦略事業部 副事業部長の東浦克典氏

また、自然環境が豊かで、市民が行政に参画する住民力があり、先進の都市環境とも相まって東京の次世代を見据えるクリエイティブシティとなったとも。

次世代のまちづくりを考えると、車が中心で大型化・エネルギー浪費型の都市部から、高密度化されてエネルギー効率の良いコンパクトシティが望まれている一面がある。そのためには、(セグウェイのような)小型化された安全なモビリティロボットが必要とされると述べた。

今回の実証実験は、茨城県つくば市の「つくばモビリティロボット実験特区」の成果を受けて、2016年3月23日付けで企業実証特例制度が適用され、民間主体の運営が可能になった。

二子玉川の紹介。2015年に二子玉川ライズが竣工し、より魅力あふれる街になりつつある

コンパクトシティの移動手段としては、自動車よりもパーソナルモビリティが重要

茨城県つくば市の成果を全国に広げるという素地があって、企業実証特例制度による新事業活動計画が認定された。これを受けて実証実験を開始

ツアー概要。事前レクチャーのあと往復5.8kmのコースを移動するが、一般申し込みの開始や価格は未定だ

コースは公道と区立公園、河原敷地のコース。歩いても1.5時間ぐらいで往復できそうだ

「都区内初」というのは、東京都立川市の国営昭和記念公園において、セグウェイのガイドツアーがすでに行われているから。また、二子玉川エリアでの実証実験には、交通マナー啓発という意図が含まれている

料金は9,000円がたたき台、要・運転免許がネックか?

質疑応答では、一般参加の料金について質問が。「現時点では未定だが、セグウェイツアーの9,000円が基準となる」と回答。ちなみに、「シティガイドツアーつくば」の費用が2時間で9,000円となっており、国内で実施されている他のセグウェイツアーも、おおむね9,000円前後だ(中部国際空港のガイドツアーは60分と短いが3,500円)。価格的にセグウェイとしては妥当なのだろうが、9,000円は安くない。払う価値をどのようにアピールするのかが気になる。

また、公道を走るセグウェイは小型特殊自動車の扱いとなるので、運転免許証が必要なので、これもネックとなりそうだ(小型特殊自動車に乗れない原付免許はNGだが、普通免許や自動二輪免許で問題ない)。

「ナンバープレートを付けたものが歩道を走行するのはいいのか?」という気もするが、セグウェイの速度が遅くされており(国内では10km/h、今回の二子玉川エリアでは6km/hに制限)、海外でもセグウェイが走行可能なのは歩道のみという国や地域が多い。日本においても、歩道等移動用自動車として規制が緩和されているので、「セグウェイは歩道を走るもの」と思ってよいようだ。

公道走行可のセグウェイ。世田谷区に申請して小型特殊自動車のナンバーを交付している。緑のナンバーは都心部だと見かけないので新鮮

セグウェイを改造せずにナンバー交付は受けられるが、セグウェイにステーを取り付けてナンバープレートを装着

当日は体験試乗会もあった。こちらは屋外試乗スペース。「はい、この指先に従うように進んで下さ~い」

説明会場に設けられた屋内試乗スペース。屋内の方がスペースが広くて動きやすかった