赤ちゃんを授かった女性に交付される母子手帳(母子健康手帳)には、妊娠中から未就学児までを対象に、母子の健康を記録できるほか、健やかな成長をサポートする情報がまとめられている。それに対し、男性の育児参加の声の高まりを受けて登場したのが"父子手帳"だ。
この手帳は自治体によって名称や掲載内容が異なっており、平成7年(1995)と全国的に見ても早いタイミングで取り組みを始めた東京都では、『父親ハンドブック』として発行している。具体的にどのようなことが記されているのか、東京都福祉保健局に話を聞いた。
平成28年度版は大きく刷新
東京都が『父親ハンドブック』を発行するようになったのは、平成6年(1994)に開催された東京都児童環境づくり推進協議会での提言がきっかけとのこと。同議会は、少子化が進む中で安心して子育てができる環境づくりを目指し、大学教授などの知識人も参画して議論がなされた。その中で、男性の育児参加の重要性を求められているものの、十分な情報提供の機会がない問題を踏まえ、父親の育児啓発を目指した『父親ハンドブック』の必要性が議論されたという。
ハンドブックの内容は、福祉保健局のほか、産業労働局や生活文化局(※全て現在の局名)など複数の局にまたがるスタッフから構成された編集委員会によって作成。平成7年に初めて発行されたものが現在もベースになっているが、平成28年度版に関しては大幅に内容を見直すという。
「具体的にどのような内容で、どのようなスタッフが関わっていくのかは定まっていませんが、例えばメーカーの声も反映した、行政のアイデアだけじゃないハンドブックができればと考えています」(東京都福祉保健局)。そのため、平成27年度版は7月に発行されたが、平成28年度版は発行時期も含めて調整していると話す。
漫画も交えて分かりやすく紹介
東京都が発行する『父親ハンドブック』は、電子版をオフィシャルサイトで公開している他、製本したものを都民情報ルーム有償刊行物販売コーナー(東京都庁第一本庁舎3階)にて、1冊80円で販売している。平成27年度版は8,100冊発行されており、各自治体が参考に購入していくほか、「夫に読ませたい」と手にしていく女性もいるという。
では実際、ハンドブックにはどのようなことが記されているのだろうか。全体的に母子手帳同様、妊娠中から未就学児までを対象とした情報を集約しており、構成に産業労働局が関わっているように、仕事と子育ての両立を目指す家庭にとっても有益な情報を盛り込んでいるのが特徴となっている。
内容は都内の保育園や支援センターのパパ・ママから聞いた「いまどきの子育て事情」や、精神科医が作成し妊娠中や子育て中のアドバイスも添えられた"パパ度"チェック「あなたはどんなパパになる? 」、赤ちゃんの1日を時系列で記した「ある赤ちゃんの24時間」、妊娠期からの母子の様子や夫・父親の心得も記した「子どもカレンダー」、男性の育児体験を漫画にした「子育て体験記」、出産や子育て、仕事との両立を支える制度、子どもの病気などを写真や図表と合わせて紹介した「父親の基本知識」、そして、サポートセンターなどの一覧「保育等施設・子育て支援サービス紹介」を掲載している。
この『父親ハンドブック』は、都内の区市町村が実施している父親教室(両親教室)で配布されることもあるが、東京都が版権をもっている『父親ハンドブック』をベースに、各区市町村で独自の項目を補足しているものもある。こうした"父子手帳"は、埼玉県さいたま市の『父子手帖』や千葉県千葉市の『育男手帳』のように、全国の自治体が積極的に展開している。自分の属する自治体でも"父子手帳"の取り組みがないか、一度、調べてみるといいだろう。