CDマスタリング、リストア、音響作成など、世界中のサウンドプロフェッショナルから、高い支持を受け続けているSteinbergのオーディオ編集/マスタリングソフトウェア「WaveLab」の最新バージョン、「WaveLab Pro 9」および「WaveLab Elements 9」が発表された。先日都内某所にて開催された同製品の新商品発表会の様子と共に、さらなる進化を遂げた新機能の数々についてレポートをお届けしよう。
オーディオ編集/マスタリングソフトウェアとして長い歴史を持つ同製品は、正確なツール、先進のアルゴリズム、高い作業効率を実現するワークフローなどを備えた、プロのニーズに応える統合サウンドソリューション。最新バージョンよりネーミングが若干変更され、同ブランドのDAWソフトウェア「Cubase」シリーズなどと統一が行われた。
また、ユーザーインタフェースのデザインも刷新されており、新たに一元化されたリボン形式のGUI(MS Officeなどのでもお馴染み)や、ファイル操作とユーザー設定に一括してアクセスできる集中管理型の「ファイル」ビューを採用し、より高い視認性と操作性が実現されている。
製品発表会では、ゲストの江夏正晃氏(マリモレコーズ)による、実例などを交えた「WaveLab Pro 9」の実践的なデモンストレーションが行われた。「最新バージョンでは、ソフトウェア全般にわたりMS処理へのフル対応が行われており大変驚かされました」との同氏の言葉どおり、最新版ではサウンドのMS処理に関する多数の機能がネイティブサポートされた。
MS対応プラグインスロットの搭載をはじめ、クリップ毎のMS波形表示の選択や、MSチャンネルの直接編集(スペクトラムエディター含む)、ステレオクリップのMSチャンネルの分割なども行えるようになり、近年のミキシングやマスタリングおいて積極的に利用されているサウンドメイキング手法が、同製品のみにて実現可能となった。
「WaveLabが、MS処理へのフル対応を果たしたことにより、サウンドのMS処理というプロフェッショナルレベルのマスタリングテクニックを、一般ユーザーでも比較的手軽に利用できるようになった。これは本当に素晴らしい!」と興奮を隠せない様子で熱く語る江夏氏の姿からも、その革新的な機能の重要性をひしひしと感じとることができた。
また、「WaveLab Pro 9」では、新たにCubaseとの連携機能「WaveLab Exchange」も用意された。本機能により、Cubaseのプロジェクトウィンドウ上のオーディオイベントを、WaveLab上のオーディオファイルとして直接展開し、その編集結果をCubaseのプロジェクトに即座に反映可能となるほか、CubaseでオーディオミックスダウンされたファイルをWaveLab上で使用している際に、WaveLab上からファイルの書き出し元のCubaseプロジェクトを開き調整を実施、その後、Cubase上で再書き出しを行えば、WaveLab上の関連ファイル/クリップに自動的に反映されるなど、Cubaseとのシームレスな連携が行えるのが特徴となっている。「Cubaseプロジェクト上のオーディオに対して、WaveLabの精細な編集・処理が必要になった場合などに便利な機能だ。江夏氏は「書き出し後のファイルのミックスをCubase上でいつでも修正でき、音作りの幅がさらに大きく広がる」と語った。
「WaveLab Exchange」機能では、Cubase Pro/Artist 8.5.10以降との迅速かつ綿密な連携が可能。なお、波形フォーマットとして、Wave/Wave 64形式を使用する場合のみ対応する |
さらに、「WaveLab Pro 9」では、EQ、DYN EQ、Compressor、Limiter、Saturation、Imagerなど、ハイクオリティーな6種類のモジュール型エフェクトを、自由に配置可能なマスタリング専用VSTプラグイン「Master Rig」も新搭載。加えて、マルチコアプロセッシングに対応し処理速度と品質が向上した「Resampler」、マルチバンド対応のエキスパンダー「Multiband Expander」、マルチバンド対応のエンベロープシェイパー「Multiband Envelope Shaper」など、多彩な最新マスタリングプラグインも装備。総じて、パワフルかつ柔軟性に富んだアップデートとなっていた。