『トイ・ストーリー』や『ファインディング・ニモ』などの名作を世に送り出してきたピクサー・アニメーション・スタジオでは、日本人クリエイターも活躍している。このたび、アメリカ・サンフランシスコの同スタジオで、最新作『アーロと少年』(3月12日公開)に参加している原島朋幸氏と小西園子氏にインタビュー。本記事では、シミュレーション・デパートメント(キャラクターをリアルに見せるための技術)を担当した小西氏について紹介する。
小西氏は、シカゴの美術大学で学んだ後、1994年にピクサーに入社。世界初の長編フルCGアニメーション映画『トイ・ストーリー』にも関わったというピクサー一筋のクリエイターだ。本作『アーロと少年』では、恐竜の皮膚の動きや少年スポットの髪の毛や服の動きなどを担当した。
――小西さんはもともとは『スター・ウォーズ』が好きで映画に興味を持ったそうですが、そこからアニメーションの世界に入った理由を教えてください。
ビジュアルエフェクト(視覚効果)をやりたいなと思ったんです。映画の世界に行こうと思ったのは、『スター・ウォーズ』をリアルタイムで渋谷で見た時に、ハリソン・フォード演じるハン・ソロに首ったけになって、その時に「映画を勉強して、絶対アメリカに行くぞ!」って決意したんです(笑)。そして、アート学校に入った時に、CG(コンピュータグラフィックス)が波に乗り始めて、ビジュアルエフェクトに興味を持ちました。
――『アーロと少年』でのシミュレーション・デパートメントは、具体的にどのような作業でしたか?
恐竜たちの皮膚や筋肉の感触を出したり、スポットの髪の毛をほわほわっとさせたり、スポットが腰に巻いているスカートに動きをつけたり、恐竜が踏んだ時の草木や芝の動きなどです。草の場合は、恐竜に踏まれると沈み、足が離れるとゆっくり元に戻るようにするんです。
――特に難しかったシーンを教えてください。
草木は、量が多かったので大変でした。場面によって、激しく揺らしたり静かに揺らしたり。木の1本に対して、もう少し揺らしてみようということになるんです。でも、後ろを揺らしすぎるとうるさくなってしまうので、絶妙なバランスが求められます。
――思い入れのあるシーンはありますか?
スポットがクシュクシュッてお尻を振るシーンですね。かわいさを強調するために、動きを大げさにしたんです。最初にスカートを思いっきり揺らして、髪の毛の方にだんだん動きが伝わっていくというようにしました。
――シミュレーション・デパートメントの面白さを教えてください。
アニメーションの方から、シミュレーションをした後の映像は「ものすごくいい」と言われます。あるのとないのとではまったく違うんです。恐竜たちの筋肉の動きなどがあると自然に見えますし、スポットがアーロの背中からポンポンポンッて降りるシーンも、スポットがアーロの皮膚を押すとプニュッてなるようにしています。そういう反動があるのとないのとでは、まったく違います。
――最後に、これからピクサーに入りたいと思っている日本人にアドバイスをお願いします。
最近は、テクノロジーも簡単になってきていますし、ハウツーものも充実していて自分で学べるようになっていて、向上心のある人は自分でどんどん勉強しています。また、コンピュータはあくまでもツールのひとつで、逆に重視されてきているのは、ストーリーや絵コンテが書ける人、アニメーションできる人だと思います。
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