ブルーリボン賞、キネマ旬報ベストテン、日本アカデミー賞など、2015年の映画賞の結果が続々と発表されたが、改めて、2015年は日本の映画界にとってどのような年だっただろうか? 『キネマ旬報2016年3下旬号』(発売中 1200円+税 キネマ旬報社刊)の内容から、振り返る。
2015年に日本で公開された映画は邦画が581本、洋画が555本の計1,136本だった。興行収入は邦画1,203億6,700万円、洋画967億5,200万円、合計で2,171億1,900万円となった。前年から比べると4.9%増と、わずかながら上向きの様子が見える。
しかし、作品ごとの金額を見ると、ヒット作とそれ以外で大きく二極化していることがわかる。興行収入10億円を超えた作品は、全部で60本(2015年公開作品の5%にあたる)。この60本のヒット作品の興収合計が1,600億円にも及んでおり、興行収入全体の8割を占めている。元パラマウント ピクチャーズ ジャパン営業部の中川聡氏は「残りの95%の作品はどこに行ってしまったのか」と指摘する。現在主流の「シネマコンプレックス」システムでは、ヒット映画はロングラン上映を行うが、客が入らなければ上映回数が減り、すぐに打ち切りとなる。これにより、大ヒットする映画と、そうでない映画の差が開いてしまっているという。
邦画1位となったのは、『映画 妖怪ウォッチ 誕生の秘密だニャン!』(東宝)、さらに『バケモノの子』『HERO』『名探偵コナン 業火の向日葵』『映画ドラえもん のび太の宇宙英雄記』『ドラゴンボールZ 復活の「F」』『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』『映画「ビリギャル」』『映画「暗殺教室」』と、東宝作品が続いていく。上位10作品の中で、東宝以外の作品となったのは、9位『ラブライブ! The School Idol Movie』(松竹)のみだった。
この勢いにより、東宝は歴代4位の好成績を記録している。アニメ作品、人気TVシリーズの映画化、ベストセラーコミックの実写化など、ファミリー層や若者をメインターゲットにする同社の路線が大きく成功した。また、ギャガとの共同配給作品である『海街diary』(是枝裕和監督)は第68回カンヌ国際映画祭コンペディション部門に出品され、日本アカデミー賞作品賞を受賞するなど、収入と評価両方に優れた結果を残した年だった。
創業120周年をむかえた松竹は自社製作に力を入れたが、年間興収は前年対比83,4%と厳しい結果に。しかしながら、『ソロモンの偽証 前篇・事件』『ソロモンの偽証 後篇・裁判』『駆込み女と駆出し男』『愛を積む人』『日本のいちばん長い日』『天空の蜂』『母と暮せば』等、業界で高く評価され、数々の賞を受賞する作品を多く生み出し、「ものづくりの会社」として大きく存在感を示した。
一方、洋画は興行収入が12.1%アップ。『ジュラシック・ワールド』『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』などのシリーズものや、ディズニーアニメ『ベイマックス』などのヒットで明るい話題を提供した。熱狂的なファンの多かった『マッドマックス 怒りのデスロード』は18億1,000万円と、話題性から言えばもう少し伸ばしたかったところだ。しかし、「爆音上映」などの施策が当たり、「立川シネマシティだけで7,500~8,000万が上っている」(中川氏)など、今後の映画館にとって重要な事例となるだろう。