『トイ・ストーリー』や『ファインディング・ニモ』などの名作を世に送り出してきたピクサー・アニメーション・スタジオでは、日本人クリエイターも活躍している。このたび、アメリカ・サンフランシスコの同スタジオで、最新作『アーロと少年』(3月12日公開)に参加している原島朋幸氏と小西園子氏にインタビュー。本記事では、キャラクターアニメーターの原島氏について紹介する。
原島氏は、ドリームワークスで『ヒックとドラゴン』シリーズや『マダガスカル』シリーズなどに参加した後、2015年の頭にピクサーに入社。『アーロと少年』では、キャラクターアニメーターとしてTレックス(ティラノサウルス)のシーンなどを担当したが、Tレックスをアニメーションすることは原島氏の昔からの願いだったという。
――Tレックスのアニメーションをやってみたいと昔から思われていたそうですね!
もともと私は、日本で理系の大学に通っていました。映画業界に入るには美大に行くというのが普通でしたが、『ジュラシック・パーク』が公開されて、理系の人間でも映画に関わっていけるのかなと感じたんです。それがCGをはじめるきっかけになりました。Tレックスに関してはその時の思い入れがあり、今回Tレックスのアニメーションに携わる機会に巡り合えてラッキーだと思っています。
――キャラクターアニメーターとして"キャラクターに命を吹き込む"というのは、具体的にどのような作業なのでしょうか。
3Dのモデルを起こし、キャラクターが実際に動いてしゃべっているように見せるという作業です。キャラクターに演技をさせて、自分で動いているように見せるのが役目です。
――今回のTレックスのシーンでは、ピーター・ソーン監督からどのような指示がありましたか?
よく知られている通常のTレックスの動きではなく、カウボーイをイメージして作ってくれと言われました。馬の上にカウボーイが乗ってコントロールしているような雰囲気、そして、戦う場面は西部劇の中のバーでのけんかをイメージしてほしいと言われました。とはいえ、人間ではなく恐竜であることは崩さずにということでした。
――Tレックスの大ファンであることが生かされたのではないかと思いますが、いかがですか?
大ファンっていうわけではないんですけど(笑)、小さい頃は恐竜の絵を描いたりしていたので、アニメーションを手掛けるのはうれしかったです。でも、通常のTレックスとは違う走りなので、みんなが思い浮かべるイメージを壊していかないといけないという難しさもありました。『ジュラシック・パーク』のような一般的な走りではなく、カウボーイと西部劇というアイデアを恐竜とミックスさせないといけなかったので。
――何か参考にしたものはありますか?
カウボーイのイメージに寄せるために、馬の動きを研究しました。また、大きさと重さを表現するために、象も参考にしましたね。すぐ加速すると軽く見えてしまうので、ゆっくり加速させるなどして重さを表現しました。
――今回、興味のあったTレックスを担当されましたが、今後のピクサーでの夢を教えてください。
いろんな作品に関わっていきたいです。あえて挙げると、ピクサーで働きたいと思うきっかけにもなった『トイ・ストーリー』のキャラクターに関わってみたいですね。
――ほかのスタジオも経験された原島さんから見たピクサーの魅力とは?
ピクサーはトップの人間が、ジョン・ラセターをはじめクリエイティブの人間なので、ストリーやキャラクターをとても大切にします。お金や時間という制限がある中で、クリエイティブの部分を大切にする会社だと思います。
――ピクサーに入りたいという日本人に向けてアドバイスをお願いします。
目標を持って、あきらめずに好きなことを続けていれば、いつか実現すると思います!
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