本田技研工業(ホンダ)は10日、新型燃料電池自動車(FCV)「クラリティ フューエル セル」発表会を都内で実施した。高い実用性に加え、空力性能を追求した流麗なデザイン、力強くなめらかなドライブフィールも実現。FCVの本格普及をめざす。
同車の燃料電池パワートレインは小型化され、ボンネット内に集約された。これにより、大人5人がゆったり過ごせる居住空間となり、トランクルームも9.5型ゴルフバッグを3つ搭載できるだけの容量を確保している。同車に搭載される高圧水素貯蔵タンクの公称使用圧力は70MPa。パワートレインの高効率化や走行エネルギーの低減により、一充填走行距離(参考値)約750kmを達成した。1回あたりの水素充填時間は3分程度で、ガソリン車と変わらない使い勝手を実現したという。
FCVは燃料電池に水素・酸素を取り込んで電気を発生させ、その電気でモーターを回して走る。排出するのは水のみ、CO2の排出もゼロとされることから、ホンダは「究極の環境車」と位置づけ、1980年代後半から研究開発を進めてきた。発表会の会場では、今回導入される「クラリティ フューエル セル」をはじめ、ホンダが2002年に開発した「FCX」、2008年にリース開始した「FCX クラリティ」も展示された。
発表会には本田技研工業代表取締役社長 社長執行役員の八郷隆弘氏が登壇。「『クラリティ フューエル セル』では、パワートレインを小型化する技術によってレイアウトの自由度が増し、ゼロエミッションビークルで世界トップクラスの一充填走行距離を達成しました。このプラットフォームは他の電動化技術にも対応しており、今後はプラグインハイブリッドモデルへの採用も予定しています」と述べた。
ホンダは水素エネルギー社会の実現に向け、「つくる」「つかう」「つながる」をコンセプトに、インフラ整備も含めた研究開発を進めている。八郷氏は水素を「つかう」新型FCVに加え、水素を「つくる」パッケージ型スマート水素ステーション「SHS」、水素で「つながる」可搬型外部給電器「Power Exporter 9000」も紹介。「SHSが作り出した水素をFCVが取り入れ、移動や生活電源に使うことで電力消費量削減に貢献します。FCVからの外部給電により、緊急電源としての使用や野外活動も可能です。街中にSHSやFCVが普及し、水素を身近に活用できる社会。それがホンダのめざす姿です」と説明した。
新型FCV「クラリティ フューエル セル」と可搬型外部給電器「Power Exporter 9000」はともに3月10日発売。導入初年度となる「クラリティ フューエル セル」は自治体や企業へのリース専用とし、リース計画台数(国内・初年度)は200台程度。価格は766万円とされている。製品の使用状態や関連団体の意見・要望などを収集した後、個人への販売も行う予定。2016年中に米国や欧州での展開も予定している。