アメリカのアカデミー賞から暖簾分けされ、今年で第39回を数える日本アカデミー賞。4日に東京・品川のグランドプリンスホテル新高輪で授賞式が行われたが、受賞者のスピーチで異彩を放っていたのが、映画『百円の恋』で優秀助演男優賞を受けた新井浩文だ。
同作は、100円ショップに勤める自堕落な女性・一子(安藤サクラ)が、プロボクサー・狩野(新井浩文)との恋をきっかけに女子ボクシングの道へ進む姿を描いた物語で、脚本の足立紳が最優秀脚本賞、安藤サクラが最優秀主演女優賞に輝いた。数ある大作を押しのけての受賞となった2人のスピーチで出てきたのが、新井の名前だった。
足立は「テーブルで新井さんが『絶対に(最優秀賞は)ありませんから』と言ってたんですが、1ミリくらい期待していたので、めちゃくちゃ嬉しいです」とコメント。安藤も会見で「新井くんはずっと『絶対ないと思うから、もしサクラが(最優秀賞で)呼ばれたら泣いちゃう』と言っていて、ちょうど主演女優の回になって『今ね、すごいトイレ我慢してるから、もしサクラの名前が呼ばれたらたぶんお漏らししちゃう』と言ってたんですよ。本当に呼ばれちゃって、泣いてもいないから漏らしてもないと思うんですけど」と新井の名前を出して笑いを誘っていた。
また、ニッポン放送のラジオ番組『オールナイトニッポン』のリスナー投票から選ばれる話題賞・作品部門を受賞した『バクマン。』の大根仁監督は、自身のスピーチの際に「会場には、『バクマン。』に出てたもう一人の役者がいるので、段取りにはないけど、新井君、来て」と急遽壇上に呼び出した。同作で主人公たちの仲間となる漫画家を演じた新井は「助演男優賞に『バクマン。』で呼ばれなかったので、どうしようかと思ったんですけど、映画は監督のものなので、監督のせいということで」と、突然のことにも関わらずひょうひょうと答えた。
新井自身のスピーチでは、肉体改造を行い、禁酒も実践したという真面目な役作りのエピソードを披露しつつ、最後は「たぶん今日来てる組のなかでトップ1くらいに制作費がない」と内情を暴露。更に「間違いなく優秀助演男優賞をもらった俳優の中でギャラが安いです。それだけは間違いないです」と畳み掛ける。フォーマルな会場の中で、ともすれば浮いてしまいそうな新井の発言だが、絶妙な語り口や共演者の反応からも、その魅力と人気ぶりがうかがえる。