3月3日、ついにCortanaのiOS版(厳密にはiPhone版)が日本でも使用可能になった。以前からベータテストは行われており、筆者の手元に招待状が届いたのは1月25日頃であった。そこから普段使っているiPhoneにCortanaをインストールし、PCと同じMicrosoftアカウントでサインインした。機能的にはWindows 10のそれと同じく、既にデスクトップPCやタブレットで使っている筆者にとって目新しさは感じない。

iPhone上で動作するCortana

もともとiPhoneで通話する機会が皆無な筆者には、デバイスに話しかけるという習慣がない。Siriも仕事で試す以上のことはしてこなかった。iPhone版のCortanaにも、さほどの期待を持っていなかったが、ある日電車で都内を移動していたところ、iPhoneから通知が送られてきた。Cortanaのテスト中に登録したリマインダーである。

以前、MicrosoftのWindows&Devices Group Cortana担当パートナーグループプログラムマネージャーのMarcus Ash氏にインタビューした際、彼は「プロアクティブな(先を見越した)情報提供がCortanaの核となる」と語っていた。その概念が、Cortanaからの通知でようやく腑に落ちた。

あらかじめリマインダーを登録しておく。この作業はPCでもiPhoneでもよい(左)。するとCortanaの通知がワンサカと……お店を出た後に近くの店で立ち止まったため、延々と通知されてしまった(右)

そもそも人の記憶は不確実である。大事な用事や思いついたアイデアも書き留めなければ、忘れてしまうことがある。そのため我々は、ToDoのようなタスクリストやメモを活用してきた。だが、それらは後で確認しなければ意味をなさない。Cortanaのリマインダーはユーザーが自らアクションを起こさなくても、忘れていた用事を思い出させてくれる。これがプロアクティブな情報提供なのだろう。

筆者はWeb版のGoogleカレンダーでスケジュールを管理し、同期したiPhoneアプリで参照してきた。日々の執筆活動もGoogleカレンダーのタスク機能を使用している。Googleカレンダーに統一することで、スケジュールとタスクを簡単に確認できるからだ。

Microsoftは2015年6月にToDoアプリのWunderlistを買収したが、現時点でMicrosoftからタスクアプリケーションがリリースされる気配はない。だが、WunderlistがWindows 10のカレンダー(Outlook.com)と融合すれば、Cortanaが次の予定やその日の作業を教えてくれるため、日々のスケジュール管理は容易になるはずである。

Windows 10版のWunderlist。カレンダーフィードを備えているため、こちらをOutlook.comやGoogleカレンダーに追加すれば、タスクリストの代替はひとまず完了する

Windows 10のカレンダー。筆者は、スケジュール管理にGoogleアカウントを用いているため、Cortanaの通知は行われない

だが、長年使い込んだツールから移行するには誰しも踏ん切りが必要だろう。残念ながら、Cortanaのリマインダーが面倒な移行作業を経てまで、Googleから乗り換えるほどのモチベーションを与えてくれるとは言い難い。

その一方で、ここ数年はGmailにしてもGoogleカレンダーにしても「使いやすくなった」という印象を持てないのが筆者の正直な感想だ。ビジネスツールとして停滞の兆しを見せるGoogleと、後を追うMicrosoft。ユーザーがどちらを選ぶかは、最終的に普段から身につけているスマートフォン次第だが、Microsoftが自社プラットフォームに閉じこもらない姿勢を見せてから、選択肢は大きく広がっている。

普段使いのスマートフォンはiOSもしくはAndroid搭載デバイスでも、使うアプリケーションはMicrosoft製に統一することも可能になった。このままCortanaが成長し、各人が必要とする機能を備えた時は、頼りになる秘書的な存在になりそうだ。その時を待つために本稿を書き終えたら、GoogleカレンダーのデータをOutlook.comにインポートしてみようと思う。

阿久津良和(Cactus)