人によっては居心地のよいインド
インドは人によって好みが大きく分かれると言われる。都市部のストリートに積み上がったゴミの山や牛がゴミをあさっている姿、日常風景になっている立ちションや、大量の野良犬と野良猿。2車線の道路がなぜか5車線以上の使われ方をするクラクションまみれの道路に、日本と比べると大きく遅れている公共インフラの整備。衛生状況はお世辞にもよいとは言い難く、日本の生活を当たり前だと思っていると面食らうだろう。
しかし、全体に流れる人間そのものの力の強さや雑多感、人なつっこさ、文化的な面白さ、それに日本と比較してかなり廉価な物価など、魅力的な側面も多い。
インターネットを介して日本の仕事をこなしながら、インドで数カ月間過ごすというのは悪くない選択肢だ。インターネットの接続性はそれほど悪くないので、十分に仕事はできる。
日本から欧米へ渡航するように、日本からインドに渡航して仕事をする機会が増えるかどうかは、今後の世界経済の発展に依存しているところがあるため何とも言えないが、面白い国ではある。欧米に飛ぶ機会が多いのなら、ビザの申請はちょっと面倒だが、一度インドに飛んで文化の違いを体験してみるのもよい経験だと思う。
おまけ:国際スーラジクンドクラフトメラ2016
インドのニューデリーから自動車で1時間ほど南方へ移動した場所に「スーラジクンド」と呼ばれる場所がある。1000年ほど前にデリーおよびその周辺地域へ向け生活用水を確保する目的で大きな人工ため池のある地域だ。スーラジは太陽、クンドはため池という意味で、スーラジクンドで太陽の池という意味になる。現在、そのクンド(ため池)は生活用水確保の目的ではすでに使用されておらず、観光資源として活用されているそうだ。
スーラジクンドが属するハリヤナ州はこの観光地に目を付け、ため池周辺で30年前からインド中の工芸品を集めて一堂に展示および販売する祭りを開催するようになった。
インドでは2月が春に相当して気候がよいことから、毎年2月1日~15日の日程でイベントを開催。 スーラジクンド祭りは地域の関係者も巻き込んで大きくなり、周辺各国からクラフトマン、アーティスト、演奏者を招いて大規模なイベントを開催するようになった。30周年を迎えたスーラジクンド国際クラフトメラ2016では、約30カ国からクラフトマンやアーティストを招いてイベントが開催された。
2016年2月、筆者はIT関連の業務ではなく、このイベントで演奏する演奏者としてインドに渡航していた。もともとは中国の関係者が招待されていたようだ。インドと中国は2015年にパートナーシップ・ネーション(協力関係にある国家)となり、今回の祭りには中国からクラフトマンやアーティスト、演奏者を招待していた。これに関しては、2015年10月にインターネット上の複数のメディアに掲載されているニュースで確認できる。
それがどうも開催を目前にして、立ち消えてしまったらしい。祭りの最中に発行された新聞には、ビザの発行に関する問題が発生したため関係者が渡印できないといった理由が述べられていたが、インドが日本方式の新幹線を採用したことや安倍首相とインド首相の会談があったタイミングなどを考えると、どうもそれだけが理由ではなさそうに思える。
コーディネーターの人は、「こっちの人は日本人と中国人の見分けがつかないから、対応策として急遽日本人を呼んだんだよ」と、冗談とも本気ともつかないことを言っていたが、あながち間違っていないかもしれない。
祭り前日の記者会見では、当局関係者や司会者が「パートナーネーション・チャイナ」という言葉を使っていたが(重要度の高い言葉として使われていた)、初日には似たようなニュアンスを持った言葉としてフォーカスカントリー・ジャパンという言葉が使われ、2日目にはフォーカスカントリー・ジャパン&チャイナという言葉が使われるようになっていた。
苦肉の策としてひねり出された新しい言葉が「フォーカスカントリー」(注目している国)だったのだろう。最初から日本の招待を目的の1つにしていたような言葉遣いに徐々に変えていった辺り、当局の運営の巧みさを覚えた。なお、この祭りに日本からのクラフトマンやアーティスト、演奏者が参加したのは初めてだそうだ。