12回目の出場にして『R-1ぐらんぷり2016』王者を勝ち取ったハリウッドザコシショウ。「誇張しすぎた木村拓哉」などのものまねを、ハイテンションな大きなアクションと叫び声で繰り出していくというネタでピン芸人3,786人の頂点に立ったが、今回の勝利の裏には、この芸風から想像できない、したたかな戦略があった。

『R-1ぐらんぷり2016』で優勝したハリウッドザコシショウ

ハリウッドザコシショウは、1993年にデビュー。今回のR-1決勝進出者の中で最も芸歴が長く、もともと漫才コンビを組んでいたが、2002年に解散してから、ピン芸人として活動してきた。

しかし、今回の優勝後の会見で「僕、1人コントとかは本当に苦手で、マツモトクラブとかのネタを見てると『うらやましいなぁ』とか思ってたりしていたんです」と、当所はピン芸人として不安を抱えていた心境を告白。そこで、得意なネタで勝負していこうと考え、同期のケンドーコバヤシと「ものまね対決ライブ」という企画を立案した。これはものまね10発をそれぞれ用意し、交互に披露していくというもので、ザコシショウは、ここから手応えをつかみ、3年ほど前から本格的にものまね芸に取り組み始めたという。

すると、それまでは舞台でも「30秒くらいで笑いがしぼむ」という出落ち要員だったのが、「すごく笑いが取れるようになりました」と役割が大きく変化。また、ものまね芸を始めた当初は、3分の間にものまねを3ネタしか入れていなかったが、賞レースに出ているほかの芸人のネタを見て「ボケをいっぱい入れ込んでいる」と発見し、コンテストを勝ち抜くために「ものまねをすごくいっぱい入れた構成にしたんです」と順応した。

こうして、R-1決勝で披露したものまねの数は、1回目が8ネタ、2回目が6ネタ。ここに、コアなものまねばかりで観客が離れてしまうことを避けるため、時事ネタなどの分かりやすいネタを盛り込むことを考えて、今回の決勝では「誇張しすぎた野々村元議員」や「そこら辺にいるヤバいサラリーマン」というものまねを入れた。

また、本番では、"2兆個のレパートリー"と自称していたが、「2兆個は言いすぎですけど、本当にいっぱいある。たぶん1兆個くらいはあると思います(笑)」と冗談めかしながら、豊富なネタの中から、今回の決勝では「100%ウケるものを選びました」と自信のものまねを注ぎ込んだことを明かす。

さらに、R-1の予選に出場する前に、YouTubeやTwitterでものまねの動画や画像をアップ。すると、有吉弘行や、雨上がり決死隊の宮迫博之がTwitterで拡散して何千リツイートもされ、予選会場で自らの名前を周知させておくという狙いも成功した。2月29日に決勝進出者の発表会見が行われてからは、Twitter上での自らの名前を検索して、一般の人たちの反応を伺っていたという。

こうした勝つための戦略が、今回の優勝につながったようだ。ザコシショウは「自分の作戦勝ちというところもありますね」と、ネタ中のキャラクターからは考えられない冷静な分析を見せていた。

それもこれも、自らを経済面も含めて支えてくれた妻への恩返しや、よく分からないおじさんから怒られるアルバイト生活から脱するため。『R-1』が自分にとってどんな存在かを聞かれたザコシショウは「深夜番組でワンポイントの芸風だったけど、それじゃあダメだということを気づかせてくれた」と感謝し、「やればできるんだということを教えてくれました」と自信につながったようだ。

R-1ぐらんぷり決勝戦・結果

●Aブロック
・エハラマサヒロ:審査員5点+お茶の間2点=計7点
◎小島よしお:審査員8点+お茶の間3点=計11点
・シャンプーハットこいで:審査員1点+お茶の間1点=計2点
・サンシャイン池崎:審査員1点+お茶の間0点=計1点

●Bブロック
◎ハリウッドザコシショウ:審査員13点+お茶の間2点=計15点
・おいでやす小田:審査員2点+お茶の間0点=計2点
・横澤夏子:審査員0点+お茶の間3点=計3点
・ルシファー吉岡:審査員0点+お茶の間1点=計1点

●Cブロック
・厚切りジェイソン:審査員4点+お茶の間1点=計5点
◎ゆりやんレトリィバァ:審査員6点+お茶の間2点=計8点
・とにかく明るい安村:審査員4点+お茶の間0点=計4点
・マツモトクラブ:審査員1点+お茶の間3点=計4点

◎…ファイナルステージ進出者

●ファイナルステージ
・小島よしお:審査員2点(間寛平1点+板尾創路1点)+お茶の間2点(41%)=計4点
・ハリウッドザコシショウ:審査員13点(寛平2点+板尾2点+清水ミチコ3点+ヒロミ3点+関根勤3点)+お茶の間3点(43%)=計16点
・ゆりやんレトリィバァ:審査員0点+お茶の間1点(16%)=計1点