--Xilinxは本国でもインターンは実施してないんですか?

やってますよ。ただそれはものすごく専門知識を持った人、半導体ではなくトランシーバがわかっているとか、DSPが判ってるとか、プロセスに詳しいとか、そういう何か専門的な経験がある人が対象です。一方、例えばFAEをやるのは凄い大変なことです。さまざまな事を知らないといけません。そういう意味では、ASSPはチップそのものは決まっていて、それをボードに実装してソフトウェアの設計をやって、という話である意味簡単じゃないですか。ところがFPGAの場合は、それを使うと決めてから、ではどういう回路をどういう形で入れるのか、といったところから、どうやってそれを最適化するのかいったところなどから始める必要があるわけです。

--日本では、40nmプロセスあたりまではASICを自前で製造するメーカーが多かったものの、その後、開発費の増大などから、最先端プロセスの製造から撤退していった結果、今では数える程度の企業しかASICを手がけることができなくなっています。ということを踏まえると、元々ASICをやっていた半導体エンジニアは余っているではないか? という気がするのですが

実際に余っているのかもしれませんが、見つけるのは大変ですね。本当にもう、来ていただけるのであればウェルカムと書いてください(笑)。正直に申し上げると、どうやってそういう人を見つけるのかが問題になっています。実は日本の企業の1つの弱点として、必ずしも広い範囲に習熟した人が居ない事が挙げられます。狭い範囲を深く掘っている方はたくさん居られるのですが、広い範囲をカバーしている人は実はあまり居ない。そのため、実際に人を採用しようとなったときに、望んでいる広さがあるかどうかがポイントになってくるんです。ザイリンクスの場合、結構ピンからキリまで、何でもやらないといけないんですね。これが良いか悪いか、あるいは幸せかどうかは別にして、我々は現在のコスト構造を守らなければいけない。少ない人数で売り上げを大きくするという話、つまり効率ですね。そのため、優秀な人は欲しいですし、居ると思うのですが、ただ深さと広さの両立が図れているかどうか、そこが難しいところです。

最近考えているのは、これまではポジションが空いたときに外から人を見つけようとするのが多かったのですが、それで見つかって入社してくれればそれはそれでよいのですが、それよりもすでに居る人間をそこに据えて、育てていったほうが成功率が高いのかな、という気にもなってます。ただ、この方法は時間がかかるのが難点ですけどね。そういった意味では今の所、私のチームはハッピーではありますが、出来ればもう少し人数を増やして、チーム全体に余裕を与えたいというのが本音ですね。

--近年の国内事情からすると、ASICを自前で起こす代わりに、新興国などが出がける安い海外のARMコア搭載SoCを買ってきて、それで対応させるといった選択肢が増えています。つまりプログラマブルに拘らないなら、安いARMコア搭載SoCとして、必要最低限のI/Oが入って、そこそこのグラフィックが使え、LinuxのBSPが搭載されていれば良い、といった流れで、そういったものが10ドルも出せば手に入るようになっています。となると、例えばZynqはどこで差別化するかというと、やはりファブリックの有無やサポートといった部分になるのかなと思うのですが、そうした安いSoCと比べた場合、どうでしょう?

日本の場合、我々の顧客の多くは大企業です。ということは、数もでますし、なによりロードマップが求められます。しっかりと、その会社が今後も存続し続ける、という意味でのロードマップですね。そういった点で安価な新興国が提供するSoCは、ロードマップが出せるのか? といった疑問はありますね。

--この大企業という線引きはどこにあるんでしょう?

まだ深い付き合いが多いわけではないですが、さまざまな製造業を中心に沢山の大企業があります。我々は顧客を「戦略アカウント」、「フォーカスアカウント」、「チャネルアカウント」という3つのカテゴリに分けていますが、それは企業としての大小ではなく、我々との商売の大きさで分けていて、トップが数社、次が30社程度、残りはチャネルという扱いなんですが、チャネルのリストにも日本の一流企業が沢山あるという状況でして、そこは本当はメジャーカスタマになるべきだろう、という思いはありますね。

--トップが数社というのは、やはり使われ方が限定的という事ですか?

単純に知らないだけなのではないか、という気もしています。エンジニアの皆さんは、自分の見たい方向だけを見てるわけで、見てる幅はそれほど広くないわけですよね。実際、他所を見てる暇がないほど忙しいわけです。さらに我々もリソースの問題から、なかなかそういったところまでフォローできない。ですから、両方のサイクルが合わないと、広がっていかないというのが現状で、一番大きな課題でもあります。

--やはり人数は必要になる?

必要ですね。ザイリンクスのみならず代理店も含めての問題です。代理店の皆さんも頑張っていることは分かっていますが、さらなるスキルアップもしていってもらわないといけない。

--そのあたり、つまり人を集めてサポート体制を充実していくのが今年の社長としての課題となる?

そうですね。