--データセンターで言うとIBMと手を組みました
この提携の話は面白いですね。マルチプロセッサのシステムを考えてみてください。そのうち1プロセッサは必ず普通のプロセッサが必要になりますが、残りはアクセラレータとしてFPGAに置き換えができるんです。
--アクセラレータとしてはFPGAが良いのか、GPGPUが良いのかは議論になりますね
GPGPUとFPGAを比べた場合、トータルソリューションや性能そのものではなく、基板やシステム全体の消費電力や温度などを考慮した場合に差が出てきます。システムとして考えた場合、GPGPUはFPGAに比べて消費電力が高いため、全体としたら消費電力の差が10倍ほどになる場合がある。
もう1点、FAの分野。例えばロボットですが、実装方法はいろいろありますが、いまだとROS(Robot Operating System)をx86系のプロセッサで動かす訳です。仮に、そのx86プロセッサがやっている機能を全部FPGAに持ってくるとしたら、どのクラスのデバイスが必要なのか調べたところ、x86で動いてる全部の処理をSpartanクラスのFPGAで実現できるんですね。ですので、性能/コスト比で考えると、マルチファンクショナルなx86系プロセッサでロボットのコントロールをするよりも100倍位効率が良いという結果が出ました。
--そういう話を色々伺っているとですね、最初に会ったときに「売り上げ5倍にするといえば2倍になる」と言っていたことを思い出しますが、現状、そのめどは立ちそうですか?
倍にはなってないですね。なってないのですが…まぁ、5倍以上分のトライはしたつもりなんですが(笑)、現状としては55%アップほどですかね。
--7年で55%は大きい数字だと思いますが、売り上げに占める日本の比率は10%程度から変わってない
当時は10%を目指していた、つまり10%に届いていなかったわけですが、今は10%強まで拡大しました。
--流石にドラスティックに30%とかは行かないですね
日本の売り上げは伸びているのですが、他の地域も同時に伸びてますからね。2008年当時の会社の売り上げは17億ドル程度でしたが、今は22~23億ドルにまで拡大しています。当然、全世界で伸びているからこその結果です。
ただ、まだまだASICは使われているわけですので、後はどうやってリソースを振り分けて、綺麗に必要ある(ASICを置き換える)ところに持っていくのか。逆に言えば、例えば通信分野は引き続き相当のサポートが必要ですが、どうバランスを取って行くのか。我々が通信機器メーカーへのサポートに投資するほど、別の所を探すゆとりはなくなっていきます。本当は、さまざまなASICを活用しているメーカーの所に行くこともやりたい。訪問して説明をすると、FPGAのメリットを判ってもらえて、案件としても取り上げてもらえることもあるからです。でも人的リソースは限られているので、その配分が難しい。
--今、日本のオフィスはどの程度のスタッフで運営しているのでしょう?
今はトータルで55人ですね。入社当時の8年前には125名体制でした。そこから一時期、45名へと減り、そこから55名まで増えました。そう考えると、人数は減っていながらも、彼らの努力で売り上げが伸びたということになります。
--逆に本国から、FAEを増やせという話はきてないのですか?
これはもう少し大きな枠の話になりますが、世の中には優秀な人材は大勢います。ところが業界としては、半導体よりもずっと派手な、セクシーな業界が現在は存在している。FacebookとかGoogleとか。我々が学生のころは、半導体は一番ホットな業界で、「将来はシリコン!」だったんですが、今は「将来はクラウド」なんですね。ですので、私の問題としては、半導体が判ってて、FPGAが判ってて、ツールもIPも判ってて、しかもまだ元気な人をですね…
--そんな人どこにいるんですか?
どこに居るんでしょうね(笑)。往々にして新しいポジションが空くことがあると、その時に人を探すことになるわけですが、もし本当に優秀な人が居るのであれば、私がポジションを作ります。ただ半導体業界は歴史がある分、それだけの難しさもあるんです。FPGAも難しいですし、本当に元気で優秀で、しかも若くて学べる人を見つけるのは難しい状況です。この業界に入るためには、頭が良いのは最低条件で、知識もないと学ぶこと自体が大変です。新卒の大学生がいきなり半導体業界や我々の会社に入ってきて、一体どこから勉強すれば良いのか、果たしてわかるだろうか、という思いはありますね。