中央労福協(労働者福祉中央協議会)は2月29日、奨学金の利用実態や問題点を明らかにするためのアンケート調査の結果を公表した。調査は2015年7~8月に勤労者を対象に行われ、1万3,342の有効回答を得た。

「日本学生支援機構」(日本育英会の後身)の奨学金制度を知っているかどうか」

「知っている」人が少ない奨学金制度の内容

奨学金制度について示した7項目について「知っている」の比率をみると、「貸与人数・金額は有利子の方が多い」が 44.6%で最も多いが、それでも半数に満たない。

以下、「日本人への奨学金は貸与型しかない」(39.5%)と「返還の期限を猶予する制度がある」(38.6%)が4割弱、「自宅等へ電話等の督促が行われる」(27.5%)と「3カ月以上の延滞はブラックリスト」(23.5%)、「延滞は年5%の延滞金が賦課される」(22.3%)が2割台、「教員の返済免除制度は廃止された」(16.0%)が1割台という結果に。多くの人が日本学生支援機構の奨学金制度の内容をそれほどわかっていない。

34歳以下の奨学金制度利用者が2人に1人

学生時代の奨学金制度の利用状況をみると、若い層ほど「利用した」が多くなっており、34歳以下では「利用した」が 53.2%と、2人に1人が制度を利用する結果となっている。

なお、奨学金制度を利用した際の奨学金の返還条件や滞納リスクなどについての理解度では、「あまり理解していなかったと思う」(32.9%)と「まったく理解していなかったと思う」(8.2%)を合わせた「理解していなかった」が4割強を占め、リスクを十分に理解しないまま借りる人が少なくなかった。

「奨学金制度を利用した際の返還条件や滞納リスクなどの理解度」(34歳以下の制度利用者)

奨学金の返還、「苦しい」が正規37%、非正規56%

奨学金の借入総額は、平均312.9万円で、月の返還額の平均は約1万7,000円。ただし、借入総額が「500万円以上」も1割みられ、これらの層では月3万円以上の返還をしている人が4割を占めている。

34歳以下の人に聞いた奨学金返還の負担感については「少し苦しい」が27.7%、「かなり苦しい」が11.3%で、これらを合わせた「苦しい」が4割近くに及ぶ。なお、雇用形態別で「苦しい」の比率をみると正規でも36.8%、非正規労働者では56.0%と半数を超える。

「返還の負担感」(「苦しい」の比率、34歳以下の制度利用者)

奨学金返済による生活設計への影響は?

奨学金の返還が生活設計に影響を及ぼしているかどうかをライフイベントごとにたずねた結果、「影響している」の比率は、「結婚」が31.6%で最も高く、「持ち家取得」(27.1%)と「仕事や就職先の選択」(25.2%)、「子育て」(23.9%)、「出産」(21.0%)も2割台となっている。

「奨学金返還による生活設計への影響」(「影響している」の比率、34歳以下の制度利用者)

このうち、「結婚」に注目して借入総額別でみると、正規労働者では500万円以上、非正規労働者では200万円以上の借り入れがあると「影響している」が約半数を占めるようになる。